お転婆お姫さまと桃鬼さんの珍道中【桃】

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「……やっ、…やめてくださいっ、」



目を開けると、目の前で桜が男に襲われていた。

顔を布で隠した大男。

無理矢理犯 され叫び泣く桜。

怖い、怖い、怖い。

ただでさえ桜以外の人が怖いというのに、こんな大男に勝てるとは思えない。


ガクガクと震える椿に、桜が震える手を伸ばしました。



「つ、椿……逃げて、逃げて」

「っ、姉さんっ、姉さんっ」



桜はそのまま椿の目の前で一晩中痛めつけられ、翌朝惨たらしい姿で発見され医者にかかりますが、桜はその後病気になり回復することなく命を落とします。

たった一人、自分の世話をしてくれていた優しい桜が居なくなったことで椿には絶望しか残りません。



「ううっ、姉さん、姉さん、うわああん」


泣かないでと、撫でてくれた小さく温かい手は二度と帰ってこないのです。

唯一醜い自分へ「生まれてきてくれてありがとう」と、毎年共に祝った姉はもうこの世にいません。


泣いても泣いても誰も慰めてくれない。

それどころか、





「うるせえな。毎日毎日飽きもせず泣きやがって、姉妹揃ってうるせえ」


馬小屋に木刀を担いで入ってきたのは、見た事もない大男でした。


姉妹揃って？


「桜も大人しくしていれば死ぬことはなかったんだ。強盗のせいにして、一度だけ味わってみたかっただけなのよ。最後までお前には手を出すなと泣き叫びやがった」


椿は口をこれ以上無理な程に開けます。

この男は家の者だと知りました。

そして最近騒がれていた事に便乗して、美しい桜を襲い死に追いやったのです。




「っ、よくも…よくも姉さんを、返せ！姉さんを返して！」

「無理に決まってんだろ。死んだんだから」


冷たく笑った大男が何をしに来たか、それは証拠隠滅。



「ヘマはしてないつもりだがな。念には念をって事でお前も死ねよ。お前は居なくなった方が一族のためだ。面汚し」

「っ、やめ、やめてっ」



体を動かす事の出来ない程弱りきってる椿を、大男は容赦なく木刀で打ちのめします。


どれくらい続いたのか、もうほぼ感覚はなく意識は朦朧として、ああもう死ぬんだなと思った時、馬がヒヒヒンと騒ぎ始めました。


「ちっ。まあ、こんくらいやりゃあ大丈夫だろ」



騒ぎを聞きつけ人が集まる前に大男は居なくなりました。




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