お転婆お姫さまと桃鬼さんの珍道中【桃】 三

▼ 終幕 そして……… ページ26

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むかーし、むかし、あるところに桃から生まれたそれはそれは美しく逞しい姫がおりました。


姫は困った人を見過ごす事が出来ない正義感の強い人で、少々お転婆でございます。


そんな姫の周りには助平で心優しき鬼の佐久間を初め、次々と人や妖が集まっては毎日騒がしい日々を暮らしておりました。







「Aさまー！！ お手紙来たよー！！」


「お手紙、誰から？」



日向ぼっこをしている桃姫のもとに駆け寄ってきたらうるはまた背が伸びました。
絶賛成長期にございます。


隣で鬼が嘆いております。



「康二さんだよ！ 読んであげるね！」



そうそう、桃姫は地獄より帰ってきて一つだけ失ってしまったものがあります。

それは視力。

力と共に視力も失ってしまいましたが、それでも何不自由なく暮らせているのは鬼を初め桃姫を取り巻く皆が甲斐甲斐しく世話を焼きたがるから。




「えっと、"みんなー元気にしとるかぁ？ みんなのばんのうちょうみ……。"ここ省略するね！ "そろそろこの国も旅し終わりそうやから、約束通り土産よおさん持って寄らせてもらうな！"だって！ いつ来るかなぁ？」

「康二、ってやつ？ なんか色々煩そうだな」

「煩いよ！ でも良いやつなんだ！」

「そうか、良い友達が居るんだな」




色男さんはというと元々の身体能力が高いのと、栄養をしっかりと取って、時々鬼の血も貰っているおかげで見る見ると元気になり、今では村一番の働き者で若い娘たちにチヤホヤされております。



「佐久間の方が人気あったのになぁ」

「なんですって？」

「いんや。なんもないでやすんよー」



目が見えなくなった代わりに、桃姫の聴力は良くなりまして、地獄から戻ったら地獄耳になったと迂闊な事は言えないと口を塞ぐ鬼でございました。





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