episode.27 報告 ページ30
馬場side.
「“中国・裏組織壊滅事件”って知っとーよね？」
その言葉に真っ先に反応したのは現役ベテラン刑事の重松だ
腐敗している警察組織を憂いており、あえて自ら必要悪として裏社会に通じ、自身たちと組み捜査情報提供や裏工作で協力している
つまり、こちら側に優しい刑事さんだ
「あぁ、知ってるぞ。中国の裏企業として疑われていた組織が一晩で潰された事件だろ」
それがどうした、と顔をしかめられた
「さすがは刑事さんやなぁ〜 よう知っとー」
そんなの誰でも知っているだろ、と今度は皆に顔をしかめられた
表の面はあっても(無い者もいるが)、こちらに睨みを効かせてくるのは、殺し屋の“仲介屋”に
“情報屋”、“復讐屋”“拷問師”に“ベテラン刑事”だ
迫力がすごい
たじろいだ自分に呆れながらも、代わりに源造が答えてくれた
「そん犯人が榎田ん紹介でここしゃぃ来たんばい」
「しかも彼、なんとビックリ、中学1年生〜」
「ここにも盗聴機つけといてよかった」と言いながら、榎田くんも説明にはいる
その他の3人はとてもではないが信じられない、とでも言いたげな顔をしている
「そんで馬場、仕事の方はどうやった？」
本来の目的を忘れるところだった
「さすが、の一言やよ
殺気も気配も感じさせず、
心臓一突きで殺ってしもうた」
「あらぁ、馬場ちゃんにこれ程言わせる“黒狐”って一体何者なんでしょうね」
ジローが「なんだか不思議な気持ちねぇ」と呟く
その言葉に「まるで狐に包まれた気持ちか？」と、マルティネスがからかう
その言葉が妙にしっくりと、胸に染みた
今まで自身が感じていた違和感が、こうも簡単に表せるとは…
「死体はどんな感じなんだ？」
重松が訊いてくる
良い機会だ
プロにも傷口を見てもらいたい
おやっさんに見せようと思って、撮っていた写真を見せる
「これは…」重松が額にシワを寄せる
「凶器は包丁か？……まるで通り魔にでも殺られた様な傷口だな」
やはりそう思うか
「そうなんよ。本人が通り魔に見せかけるよう意図して殺ったんよ」
「マジかよ…」
マルティネスの声がやけに響いた気がした
「本当に何者なんでしょうねぇ…」
沁々と呟いたジローの言葉が、静かになった店内に残された
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作者名：星奈 | 作成日時：2018年10月13日 10時
