episode.26 カオス ページ29
馬場side.
「あんた、何か食べると？」
そう訊いても黒狐からの答えが返ってこない
不思議に思い彼のいる方を見ると、応接用のソファに突っ伏して眠っていた
「しょうがなかねぇ」
はぁ、とため息をつき、近くにあった毛布をかけてやった
まだまだ子供だな
先程まで子供らしくなさすぎる行動や思考を聞いて少し不気味に思っていたが、目の前で安心したように眠る彼を見てホッとする
─笑っている顔しか見たことがなかとね
表情筋が緩んだ寝顔を見て思う
もしかしたら彼は無理に笑っているのかもしれない
そんなことを考えていると、“ぐぅ〜”と間抜けた腹の虫がなった
そういえば、昼間は色々なことがありすぎて食べるはずだったラーメンを食べていない
報告ついでに食べに行こう
“少し出掛けてくるね
着替えたかったら、これば使うて良かばい”
まだ使っていない寝巻きの上に、そう走り書きで書いたメモを置いて家を出た
──
“源ちゃん”の暖簾をくぐると見知った顔ばかりがそこにいることに気づいた
珍しいこともあるものだ
「あら、馬場ちゃんじゃない」
相手側も気づいたようで笑顔で迎えてくれる
端から見れば異色の組み合わせだ
金髪キノコに元美容師のオネエ、さらにはガタイの良い外国人に現役刑事の男
そこに自身も加わると思うと、少しカオスな気もする
「おやっさん、ラーメンとビール
あと、彼ん仕事んことなんやけど…」
「どうやった？ て言うか今日行ったと？」
驚きつつも身を乗り出してくる
そんな様子に興味を持ち出す先客たち
「えー、何？ 彼って“黒狐”のこと？」
金髪キノコこと、榎田くんが発した言葉にドキッとする
そんな様子を見てニヤニヤと笑う榎田くん
「あれ、ビンゴー？ ていうかボクがここを紹介したから、そりゃそうか」
さらりと爆弾発言まで落としていった
まぁ彼のことだ なんとなく察してはいた
「えぇ〜、何の話？」
元美容師のオネエこと、ジローがいかにも興味津々!といった感じで訊いてくる
彼は普段中洲でバー“Babylon”を経営している
しかし裏の顔は“復讐屋”だ
「そうだぞ。俺らにも教えろよ」
ガタイの良い外国人こと、ホセ・マルティネス
ドミニカ共和国出身の男だ
表向きは整体師だが、本業はあらゆる手段で対象を痛めつける“拷問師”
ちなみにゲイだ
「“中国・裏組織壊滅事件”って知っとーよね？」
episode.27 報告→←episode.25 馬場探偵事務所
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作者名：星奈 | 作成日時：2018年10月13日 10時
