episode.15 出所 ページ17
ｷﾞｨｨ、と音を立てて扉が自動的に開いた
監房を出ると他の組の様子がよく見えた
奇声をあげながら攻撃する者、逃げ回る者、そして…悲鳴をあげながら死んでいく者
次々に扉が開き中から
《──おめでとう。君たちは見事、試験に合格した》
なにが、おめでとう、だ
おめでたくもなんともない
《相棒を殺すことによって、君たちは人間の心を捨てた。このときより、一人前の兵器となったのだ》
─初めて、人を殺した
僕は自身の両手を見つめた
生ぬるい赤い液体が手にまとわりついている
─僕はもう戻れない
逃げ出したかった
でも、もう戻れない
僕は人殺しになってしまったのだ
「あ、ああ、あああぁ、っ──」
1人、また1人と泣き出した
喚いていた
嘆いていた
友の死を、悼んでいた
ふと、監房に目がいく
寝台の上には
涙はもう流れなかった
──
次の日、僕は出所した
イリーナ姉さんは何も言わず、ただただ僕を抱き締めてくれた
教官は僕に何かのメモと写真を渡してきた
どうでも良かった
目の前にいる教官が憎くて憎くて、しょうがなかった
周到で冷徹なこの男がとても憎かった
でも、殺せない
殺したくても殺せない
コイツには勝てない、そう分かっていた
僕は中国の裏社会をまとめるマフィアに買われた
なんでも良かった
“自分以外の誰も信じない”
昨日の出来事で再び誓った
その言葉と事実だけで、あとはどうでも良かった
それから半年後…
・
・
・
僕はその組織を一晩で潰した
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作者名：星奈 | 作成日時：2018年10月13日 10時
