【QK】五重奏の鍵 (ページ22)

今日:50 hit、昨日:44 hit、合計:12,581 hit

臙脂のちいさなページ22

ドアを開けようとしたその瞬間。

「違う！！危な！！」

この部屋(？)で誰も思い出してないことに気がついた。いけない、次に進むところだった。ごめんよ誰か…

しかし思い出すって…どうやって？
あれ、今まで勝手に思い出してたよな。何がトリガーになっていたんだ？
「声…？いや違う。もう少し前だ。夕焼け…」

思わず花を見た。見てきた夕焼けのような橙色をしている。
「ねぇ、君じゃだめなの？
　ここの空は霧がかかってるんだけど…」
そう空は霧で見えない。
「どうすればいいかな」
隣の花にも呟いた。蘇芳の色…つまり赤黒い花に。
…赤黒いは申し訳ないな。臙脂色のほうが似ている。

ドアの方に振りかえった。

すると、景色が一変して横断歩道になった。
「え、なんで…？？」
その景色は確かにここにあるのに、とても現実ぽくはなかった。夢を見ている感覚で歩こうとも思わない。

自分は横断歩道の真ん中らへんにいた。向こう側に誰かがいる。夕空の逆光で顔がはっきりしなかったが口を開けて、目を見開いていることがわかる。まるでさっきの俺みたいだ。
あの人以外は何もない。
太陽の光が強くなる。どんどん眩しくなって目を閉じた。

…人体錬成」

…丿乀(へつほつ)』

……っ、伊沢さん！！！」

その声は…

「山本か…？」
そうだ。あいつは山本だ。

なぁなんで、
そんなに悲しい顔をしてるんだ？