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決行すると決めたらすぐに心が決まって。
今、俺はAの部屋の窓に腰掛けている。
勿論、人間の姿で。
部屋にAが戻ってくる音がしている。
「……ただいま、ゾム。今日もつかれ…え？」
襖を開けた彼女は何が起こっているのかわからない、と言った表情でこちらを見ている。
「…おかえり、A。」
「だ、だれ！？ひ、人を呼びますよ！」
咄嗟に襖に手をかけるA。ここで人は呼ばれたくない。
「そんな警戒せぇへんで！なぁ、俺が誰かわかる？」
「……」
じっと俺の顔を見つめる。かちり、と瞳が合うとはっとした表情で彼女は言った。
「…ゾム？」
「そお、大正解！やっぱAならわかってくれると思ったわー！」
きちんと当ててくれたことに幾許かの満足感が広がる。
「っ、でもゾムは2年前に死んだし…猫…」
Aは自分で名前を当てたものの、まだ信じられていないようだ。
「俺な、死んだしすぐ後に転生してん。」
混乱している彼女に俺は今までの事を全て話した。わかりやすく、伝わりやすいように。
「…つまり、俺はAを幸せにする為にここに来たんや。」
「は、話はわかったけど、ゾムはこれから何をする気なん？」
「A、お店から抜け出そ。」
Aは信じられない、といった顔で固まった。確かに彼女だけではそんな事は無理だ。
だけど、俺がいる。
「俺はさっきも言ったけど、ただの人じゃない。実際猫になってここにいたんだから。俺なら、ここからAを連れ出すことができる。」
「で、でも住む場所とか食べる物とかどうするの？」
「そんなん、俺が転生してから住んでた場所に行けばええ。」
だから、大丈夫。
そう言って、俺は手を伸ばす。
彼女の目には俺と三日月が写っている。
あぁ、綺麗だな。
月も、Aも。
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