＊ ページ33
私は急いで彼の顔を見た。
間違いなく、シャオロンだ。ただ、彼の表情は今まで見た事ないくらい怒りを表していた。
「……どうしてAに近づいた？答えろ。」
私を腕に収めたまま彼は将さんに問いかけた。
年上であり、更に異形の姿である将さんに全く臆することなく。
「……そりゃあ、天下の"天邪鬼"様のお気に入りですから是非1度お目にかかりたくて。」
体が動かないらしい将さんはそう答えた。
あまのじゃく？確かにシャオロンはあまのじゃくだが、どういう事だ？
「違ぇだろ雑魚。俺のお気に入りを殺して、"自分が良種になれる"と思ったからだろ？こっちは全部聞いてんだよ。」
状況が理解できない。りょうしゅ？おきにいり？
何がなんだか私にはわからない。そもそもなんで将さんとシャオロンが顔見知りなの？
「……ﾁｯ」
「今更泣いて詫びて膝付いたってもう遅いかんな。
お前は今ここで地獄に行ってもらう。」
そうシャオロンが宣言すると、彼がいつも読んでいた本がポンと目の前に現れた。
そして彼が何かを呟くと、
その本から沢山の漢字を纏った蔓のようなものが出てきて将さんに巻き付く。 抵抗している様子だが、段々と本の方に吸い寄せられていって、そして……
本に吸い込まれて消えた。
将さんを吸い込んだ本はまた何処かに消えて、その場にはシャオロンと私の2人になった。
「うわぁぁぁぁぁ………」
先に声をあげたのはシャオロンだった。その場に座り込んだが、私の事はしっかりと抱えてくれている。
そしてそのまま私の肩を抱き、しがみついてきた。
「……ごめん、遅くなって。怖い思いしちゃったでしょ。俺が見誤った。危険な目に合わせた。」
怖い思いをしたのは確かだし、あと一歩遅れてたら死んでいたのは間違いない。でもそんな事よりも私は根本的な事の方が気になってしまう。
「…確かに怖かったけど……それよりも色々と気になる事が、ある。」
私がそう言うとシャオロンは苦虫を潰したような、少し険しい顔になってしまった。迷っているような困っているようなそんな表情だ。
「勿論こんな目に合わせちゃったのは俺の責任だから、話すつもりだけど………どんな事でもAは怖がらないでいてくれる？」
異形の姿になった将さんと臆することなく話していた彼。その行動と今の言葉から彼のこれから話そうとしている内容が少し見えてきたような気がした。
「…うん、大丈夫だよ。話して。」
もし彼も将さんと同類でも助けてくれたのは事実だから。
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