不器用な2人【sh】 ページ22
からんころんと響く鈴の音。
お客さんが来たようだ。
今は昼時、1番混む時間帯だ。
「いらっしゃいませぇ………」
「なんやお前、ヘッタクソな笑顔やなぁ。ちゃんと接客せぇや。客やぞ。」
笑顔で迎えようとしたが、そこには腐れ縁の彼がいた。
「シャオ、ロン………」
お昼の混む時間帯を過ぎ、店のお客さんも大分減った頃。私は店の1番奥の窓際の席に座った。
「はぁ…なんでいっつも急に来んのよ。」
「そりゃいつ来れるかわからんからな。」
グチグチと文句を言いつつ、彼に注文した珈琲を提供する。
「ん…うま。これ淹れたん誰？」
「………厨房の子。」
本当は自分だが、言いにくくてつい嘘をついてしまう。
「ミルク多めで苦くないから俺好みだわ。後でお礼言っといて。」
「ん。」
目を合わせるのが嫌になってきて店内に目をやると、同僚の友人達が気がついたのかクスクス笑っている。
「〜〜っ！」
強がっている自分が恥ずかしくて、今度は窓に顔を背けてしまう。
「……どしたん、A。今日はヤケに大人しいな。」
いつもやったらすぐ突っかかってくんのに、と煽ってくるのにイラッとくるも、どうにか抑える。
「んー、別に。気分じゃないの。」
少し含みを持たせた言い方をすると、シャオロンはニヤリと口角を上げた。
「まさかお前………恋、とか？」
ビクッとわかりやすく肩を震わせてしまい、大笑いされる。
「あっは！わっかりやすぅ！えー誰なん？」
みるみると赤くなっていく顔を両腕で隠しながら、彼から顔を背ける。
「言わ、ない。」
「教えてや、なぁなぁお前と俺の仲やろ？」
こうなってしまったシャオロンは非常に面倒臭い。だからと言って、本当の事を言えばバカにされることは目に見えている。
しかしキラキラと目を輝かせる彼には勝てるわけがなかった。
「…よく、店にくる……軍学校の、人」
ぽつりと口から零せば、二人の間に沈黙が訪れる。
「……………ほーん？」
しばらく固まっていた彼の顔が面白いものを見つけたという表情に変わる。
「まぁお前ブスやから、せいぜい嫌われんよう気ぃつけや？」
カチンときた。本当にその一言で毎回キレてしまう。
「…っ！う、うるっさいわ！いいわよ！すぐに付き合ってやるわよ。見てなさい？」
怒りの余りそう叫び、私はバッと立ち上がり、クスクスと楽しげな声をあげているシャオロンを無視して、店の奥へと引っ込んだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 119人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
