恩返し【zm】 ページ1
俺は猫。猫のゾム。俺は女の人がいっぱい暮らしているお店の看板猫だった。
そこのお店にはごっつ美人な女の人が沢山いた。
…まぁ、俺は白粉の匂いが苦手やってん。あまり近寄らんかったけど。
そんな俺の遊び相手は、もう少し幼い奴ら。
普段はお店の雑用とかをやってるみたい。
中でも俺はAって奴が大好きだった。
そいつは俺が2歳の時にやってきた。
なんか知らんけど悲しい顔をしていた。
俺は少し気になったから、優しい声で
「にゃーん」
って鳴いてやった。そしたら、少しだけ笑ってくれた。
その笑顔は今でもおぼえている。
それから俺は、毎日Aと遊んだ。
遊んだって言っても、Aは大人しい感じの奴だったから、俺は大抵膝の上で寝ていただけやけど。
優しく撫でてくれるAの手の感触を今でも覚えている。
まぁ、そんな感じで10年くらい過ごしてたら寿命が来てしまった訳で。俺はあっさり死んだ。別にもっとやりたいことがあったのかと言えば特に思いつかないが、強いて言えば最後に見たAの顔が心残りなくらい。
てなわけでここは霊界。所謂あの世だ。
俺の目の前には、かみさま、って奴がいる。
「あー、君は猫のゾムくん？」
「せやけど。」
「天国行く？」
「めっちゃ雑やな。」
「いや、別に君特に目立った悪さしてないでしょ。強いて言えば、お店の花瓶割ったくらい。でもお店の人も怪我してないしさぁ。罪人じゃないなら、お咎めなしだよ。自由にしな〜。」
なんやねんこいつ。腹立つなぁ。
自由にしなって…強制的に天国へ連行されるもんかと思ったわ。うーん……
「なら俺、転生したいねん。」
「ん？いいけど、何になる？」
「ヒトがいい。Aにもっかい会いたい。あいつに恩返ししたいねん。」
「A…？あぁ、君の飼い主か。」
「せや。あ、でもまた1歳からだと、遅いねん。そこそこ年とった状態がええ。あとAのこと覚えてたいし、男で頼む。」
「注文多いな！！えー、まぁ…うーん、仕方ないなぁ…えいっ。」
目の前の奴がそういった瞬間、体が落ちていく感覚に襲われた。
意識を失う直前、
『2年間は記憶なしで生きてね』
というあいつの声が聞こえた。
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