「もう他人じゃない」【降谷零】

番外編 工藤新一の独白2 ページ48

あの時の茅ヶ崎は、不安定で苦しそうで、今にも溺れそうだった。けど俺にはそれの救い方が分からなくて、結局は見守るしか出来なかったけど……




「あ、ここ1桁ズレてる」

「わ、ほんとだ！だから答えがあわなかったんだ
なんかAに教えてもらってると賢くなった気がする」

「そんなことないよ。蘭ちゃん計算早いし、発想力もあるから、元から賢いよ」

「もー照れちゃう！」



今は、あんなにも柔らかな表情をしている。
そして、


「いいですね、蘭さん
僕もAさんに褒められたいなー」

「わーイケメンだーすごーい」

「棒読みが凄いんですよね」



安室さんにしか見せない笑顔。

あの二人の間に何には他の人が入れない特別な空間があるような気がするんだよな。

何度か衝突したりしてるみたいだが(何故か俺はよくその現場にいたりする)結局は余計に絆が深まったりしてるみたいだし…

安室さんは難しい男だぞって言ってやりたいけど、本人が怖いので言えない。



「どうしたのコナンくん
私の顔になにかついてる？」

考え事をしていたら、茅ヶ崎に気づかれた。蘭が問題に集中しているから暇になったんだろう

「んーん。ついてないよ」

この前の怪我のこと、なんにも聞いてこないし
恐らく安室さんの秘密も全部ではないけど、知ってるんだろう。


けど茅ヶ崎はずっと茅ヶ崎のままだ。
……いや、違うな


少なくともあの放課後の茅ヶ崎とは違う。





「あの時ボールがA姉ちゃんに当たってよかったなあーって思って」

「ほぉ……私が全治2日のたんこぶが出来て良かったと？」

「短っ！なら別にいいじゃん！」

「よくないよ！もっと女の子に優しくしないと好きな子に嫌われちゃうよ？」

ニヤニヤ


……こいつ、絶対わかってるな



「安室さーん！A姉ちゃんこの前、同級生に告白されてたよー！」

「あ゛っ！？ちょなんで知って」




「ほぉ〜 ちょーっとお話聞かせてもらいましょうか？」

「黙秘権を行使します」

「はい裁判長！サッカー部部長から告白されてました！」

「蘭ちゃん勉強してたよね？なんで？聞いてたの？ちょなんで笑ってるん？裏切りだよ？こら目をそらすな！も゛ーーーコナンくん！！！！！」


「有罪ですよAさん！！」


たははは…
俺にカマかけた仕返しだっつーの



もう、あの時のような孤独は味合わないように。


あの放課後にいた茅ヶ崎のことを忘れるくらい、この先もずっとそうあって欲しいと願っている。

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