「もう他人じゃない」【降谷零】

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ホテルから出て、安室さんの車に乗り込む。
勿論手は直ぐに離した。

(もう少し繋いでくれてもいいのに…)

(なんの冗談っすか)



カーナビに行き先を設定して、向かったのは…







「うわ…すごい…でっかぁ…」

「ですね…」


2人が見あげる先には、悠々と泳ぐジンベイザメが居た。

そう、私が安室さんを連れてきた先は東都水族館。
今この水族館の目玉であるジンベイザメを眺めている。



「…意外でした」

「何が？」

「いえ、Aさんが水族館に行くイメージが無いので…」

「そうですか？結構私行きますよ」

「魚好きなんですね」

「まぁ美味しいので」

そう言うと吹き出す安室さん。
この人のツボよくわからない…

「あはは！はぁ…もう、想像通りと言えば想像通りですね」

「どういう意味です？」

「煮付けが好きですか？やっぱり塩焼き？」

あ、話変えやがったな

「塩焼きですね。七輪で焼く鮭は特に最高です」

「懲りますね〜」

「安室さんは？」

「僕は最近アクアパッツァにハマってます」

あくあぱ……？

「へ、へぇー！確かにおいしいですよねー！」

「でしたら今度僕に作ってください」

え゛っ

「ま、まぁそのうち…」

「あはは！」

多分…いや絶対からかわれてる。
ムッ、とするけど自然な笑顔で魚を見つめる安室さんを見てどうでも良くなった。

「…？僕の顔になにかついてます？」

「ついてないですよ。狙い通りだなーって思って」

「え？」

「安室さんって魚の名前詳しいですか？あの小さいやつなんて言うんですかね」

「…あれはチョウチョウウオですかね」

なんでも知ってるなこの人
この大きすぎる水槽の隅でぴょこぴょこと動くチョウチョウウオから目を離さないまま

「この時間、ショーが沢山重なってるんでお客が少ない穴場なんです」

「たしかに。休日にしては人が少ないですね」

「それに皆、魚を見てるから人目を気にしなくていいんです」

「！！」

「安室さんは何か見たいものありますか？」

「…そうですね、クラゲが見たいです」

「えっ意外」

「可愛いじゃないですか」

「美味しくはなさそうですよね」

「Aさんの基準って基本食べれるか否かですよね」

「…はは、まぁそうですね」

前世じゃ極貧だったから空腹しのぎに魚見てたとか言えないし…

なんか分かってきたぞ。
多分こういう所がアレなんだ。

普通の可愛い女の子は水族館に来てあの魚美味しそうとか言わないんだろうな…

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