月夜に舞う (ページ6)

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scene5 ページ6

佐「お亮ちゃん、またね‼」

阿「うん、お買い物楽しかった。ありがとう。」

あの後、お団子屋さんを出た二人と侍女は街の出店でお買い物をした。
さくは可愛らしい桜の簪。
お亮は妓楼の妹達にお土産として江戸で流行っているらしいお菓子を買った。

ドンッガサッ

阿「申し訳ございません‼お怪我はございませんか
　 ⁇」

肩と肩がぶつかった衝撃でお亮の抱えていたお菓子が落ちた。

目「こちらこそ申し訳ない。よそ見をしていたもの
　で。」

落ちたお菓子を拾い青年はお亮に渡す。

目「中の物壊れていなければ良いのですが。

　 …どうかしましたか⁇」

阿「…ぞっとした。」

目「え⁇」

青年の訝しげな表情を見てお亮ははっとした。
今自分はなんと言った⁇
廓言葉を使ってしまった。
あまりにも青年の顔が精悍で綺麗だったから。

目「どうかしましたか⁇」

阿「あ、申し訳ありません。失礼いたします。」

お亮は青年の横をすり抜け妓楼まで走った。

阿「そんなわけないっ‼そんなことあってはいけな
　んし。」

花魁が、自分みたいな汚れた女が抱いて良い感情ではない。
お亮は強く否定することで先程自分の中に生まれた感情を殺した。

「姉さん、おかえりなさい。」

阿「ただいま。これ、みんなで分けて食べなんし。」

「ありがとうございます。どうなんした⁇」

阿「どうもありんせん。疲れたからもう休むわ。」

寝てしまおう。寝てこんな感情忘れよう。
幸いかのさまと会うことは二度とないのだから。

お亮は強く目を瞑った。