月夜に舞う (ページ15)

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scene 14 ページ15

最後にお亮は微笑んだ。
あれは雪華大夫ではなくお亮の笑顔だった。

その笑顔に目黒様が動けなくなっている間にお亮は男達とこの店を後にしていた。

目「お亮、俺は。…俺は‼」

女将「お亮、あんたは賢い子だと思ってたんだけど
　ね。しばらくここで反省してもらうよ。」

お亮は妓楼の地下にいた。
ここは妓楼から逃げて連れ戻された遊女が閉じ込められる牢だ。

阿「わっちは逃げたわけではありんせんのに。」

「そうなんだけどね。あんたはここの大事な稼ぎ
　がしらだからね。これ以上変な気を起こさない
　様に、ここで反省してもらうのさ。」

阿「わかりんした。だから、お願い。あの子の傷ちゃ
　んと手当てしてあげて‼」

女将が出ていき、お亮は冷たい床に腰を下ろす。

幸いお丸さんや町の人達が怪我することもなく、目黒様といたこともばれなかった。

阿「蓮様…」

あの時目黒様が触れた頬にお亮は自分の手を添える。

阿「冷たい。蓮様の手は暖かかったのに。」

目黒様の温もりを思い出しながら、あの時自分はちゃんと雪華大夫を演じられただろうかと考える。

目黒様なら絶対素敵な、相応しい人が見つかる。

こんな汚い自分なんかといるより幸せになれるだろう。

阿「蓮様…」

他の誰かと微笑み合う目黒様を想像するだけでお亮の胸はとても痛かった。

阿「でも、私には蓮様との暖かい思い出がある。」

思い出すだけで泣きそうになるが、それと同時に生きる力も湧いてくる様だった。

阿「蓮様…、どうかわっちなど忘れて。幸せになって
　おくんなんし。」