セイレーンの受難 (ページ8)

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はちページ8

鏡の間に集まる、新入生たち。
始まった寮分けの儀式にボルテージは上がりまくり、熱気が渦巻いていた。

そんな様子を遠巻きに見つめる…私(人間オスの姿)。
何故シレーヌ・ルーが人間のオスに変身してナイトレイブンカレッジの入学式に参加しているのか。
これには深い理由があって…、まず陸に来た経緯から話しますね…。
なんでも、ナントカ病で突然ぶっ倒れた私は、その病気の権威がいるというNRCに急遽運び込まれた、らしい。
らしい、というのは、なにしろ運び込まれた前後の記憶が全くないので、他の人に諸々聞きかじった程度の事実しか知らないから、である。
運び込まれた、はいい。治療する数年の間、NRCから出れない、もいい。では、シレーヌ・ルーはその間勉強出来ないのか？教師たちの間で熱い議論が交わされ…そしたら、まあ、男子校であるNRCでなんとか学んでもらおう！というトンデモ配慮(私からすればありがたい)が出たんですね。
そして、そのなんとか…人間オスに変身をして、遂に今日、晴々しい入学式を迎えたわけです。

ですが。本気でうるさい。
ざわ…とかでなく、ワー！！とかウオー！！とかで、もはや騒音すぎて、クロウリーの言ってることがなにも聞こえません。すごすぎるだろ。

もう、寮分けは最後でいいです…と諦めてド後方で目を閉じていると、突然、ほんとうに突然、首元で誰かが鼻を鳴らした。
ヒエ！？ここ最近で1番の恐怖体験にマジビビりしながら、反射的に目の前の恐怖体験を両手で押した。

「おおと、パルドン。どうも、良い匂いがしたものだから」
「は、はあ！？」

私の両手の先、そこには、帽子金髪パツパツ男が悪びれもせずニコニコと佇んでいた。
なに笑ってんだこの不審者！？、ぞわぞわする首元を押さえながら睨みつけようとして…やめた。
多分この人2年生だ。年上に歯向かってよかったことなんて、ないからね。

「ふむ、キミの名前は？」
「…シレーヌです」
「シレーヌ！成程、シレーヌ」

にっこり、微笑みを深めて、その不審者は私の両手を強く握った。

「キミとは、ポムフィオーレで是非会いたい」
「は、はあ…」
「寮分けのときに、ポムフィオーレに行きたいって、そう願ってほしいな」

どでかいお目めに気押された私は、つい、頷いてしまう。
そんな私をみた不審者は満足そうに目を細め、式典服を翻しながら去って行った。

さすが、問題児だらけのNRC。
首筋をさすりながら、絶対ポムフィオーレはやめよう、そう決意した。