セイレーンの受難 (ページ6)

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ろくページ6

ぼんやり、意識がゆっくり浮上していく。
まだ起きたくないな、なんて思っているうちに、自然と瞼が上がった。
夜が怖いと泣く私のために、父が貼ってくれた太陽が見える。見慣れた、天井だ。
…なんだか怖い夢を見たような。
夢心地で体を起こすと、ベッドサイドで座ったまま眠る母を見つけた。

「母さん」
「…シレーヌ！」
「う！？」

ぎゅうぎゅう、痛いくらいに私を抱きしめる母。
物音を聞きつけたのか、父が大きな音を立てながら部屋に駆けつけ…、私を見たとたん、母ごと抱きしめた。

「シレーヌ、あなた、学校に閉じ込められてたんですって」
「学校…」

そうだ、あの暗闇。夢じゃなかったんだ。
…真っ暗なあの時を思い出すと、息が詰まる。でも、そう、フロイドが助けてくれた。あのフロイドが。
フロイドが、私がそう言いかけると、父と母が優しく離れて、言い淀む私の次の言葉を待ってくれた。

「フロイドが、助けてくれたの。だから、大丈夫」

ほら、と笑ってみせたが、やっぱり涙は溢れてしまう。
それをみて母がまた抱きしめてくれるものだから、次第に嗚咽混じりの大泣きになってしまった。ちいちゃい子供みたいで、はずかしい。
そんなこんなの醜態に、もちろん学校はお休みで、家族みんなでじっと固まって一日を過ごした。
みんなで映画をみたり、ご馳走をみんなで作ってみたり…、なんてしていれば、やっぱり元気は出るもので。

明日は学校に行こう。フロイドにありがとうを言わなきゃ。
そう胸に決めて、夜に目を閉じた。

◯

父と母に死ぬほど心配されながら家を出ると、そこには死ぬほど目立つ3匹衆が待ち構えていた。
いつもと違って暗い表情をしていた彼ら、しかし、私を見つけると一目散に泳いできた。

「体は大丈夫ですか？」
「もう怖いことないからねえ」
「痛いところは？」

アズール、フロイド、ジェイド、矢継ぎ早に言葉を投げかけられて、つい吹き出してしまった。双子ってこんな殊勝な顔できたんだ。
3匹とも、思いの外元気そうな私(大爆笑)にぽかんと口を開けてマヌケヅラしている。

「本当にありがとう、みんな」

一通り笑い終わってからお礼を伝えて、3匹まとめて抱きしめた。
フロイドだけじゃなくて、アズールとジェイドも私を助けにきてくれた。両親からそう聞かされたとき、胸が暖かくて、どうしようもなくなって、はやく3匹に会いたくて仕方がなかった。
本当の、わたしの友達。
固まる3匹の背中を押して、私は意気揚々と学校へ泳ぎ出した。