セイレーンの受難 (ページ3)

今日:5 hit、昨日:0 hit、合計:878 hit

さんページ3

最悪なことが２つと、いいことが１つあります。
どちらから聞きたいですか？
最悪なことですか、はい…。

最悪なこと、１つ目。
それは、フロイド・リーチに毎日付き纏われるようになったことです。
学校への道中、私の左手を意味わからんほど強く握ってご機嫌なフロイドリーチを睨みつける。
おい、なんで、なんでニコニコなんだよ。
こちとら殺意だぞ。
２つ目、２つ目は、…ジェイド・リーチにも付き纏われるようになったことです………。
フロイドのように手を握りさえしないものの、ピトリ……しなをつくりながら私の右側を陣取るジェイド・リーチを見やる。
私の視線に気づいたのか、ジェイドがフ、と未亡人のような微笑みで応えた。
なんでや。

どうでしょう。この最悪2点。
嫌すぎるブルゾンちえみ第一位だとおもいます。
最悪すぎるちえみに、前までは話しかけてくれてた人魚たちもついに怯えながら見つめるだけになってしまいました。
本当に、友達、もはや知り合いすらいなくなっちゃった…涙

心で大泣きして、大きなため息がひとつ、出る。
すると、フロイドが大袈裟に眉毛を下げながら私の顔を覗き込んだ。

「どおしたのお、シレーヌ。またクラスのやつらに嫌なことでもされたあ？オレがぶちのめそうか」
「フロイドったら。そんなことしたらシレーヌが気まずいでしょう。退学させればいいんですよ」
「あああああ」
「シレーヌが壊れたあ」
「おやおや」

なんだお前ら。
なんだお前ら！

泣きじゃくりながら家に帰りたい。
フリーな右手でギリギリ痛む胃を押さえていると、向こうから私の救い、唯一のいいことが泳いできた。

「シレーヌ！とフロイドとジェイドじゃないですか。」
「アズ、アズール…たすけて…」

こら！とアズールが太ましいcuteな足でフロイドとジェイドを思い切り引き剥がす。
2人はムムと文句言いたげだったが、そこは昔からの知己アズールのしたこと。素直に私から離れていった…いや、フロイドくん。ミリしか離れてないですけど。
そんなフロイドを見て、アズールはため息をつきながら私とフロイドの間へとふんわり収まった。

「全く。すみませんね、双子が。」
「アズールのせいじゃないから！でも、ありがとね…」
「…はい。急ぎますよ。遅刻です。」

少し水温が暖かくなってきたからかな、頬をピンクに染めたアズールがフロイドの500分の一の力で私の手を引いた。
いいこと、それは最近友達になったアズールのぷにぷにの手がきもちよいこと。