じゅうろく ページ16
とりあえず、監督生さんを助けてあげよう！アズールを探すのはそのあとで…、て思って一緒に歩き出したけど。
女の子と話すのって、どうやるんだっけ？
目泳いでないかな、監督生さん怖がってない！？
とっさにとってしまった手の先、監督生さんの様子をちらと伺ってみる。
…なんか、困ってる？
あー…、手なんて握らなきゃよかった。そうだよね、フロイドと同じくらい大きいカラダのオスに急に触られたら、怖いよね。いつだったか、バカでかいサメがいつのまにか並んで泳いでた時、しぬほど怖かったもん。
「さ、ここがフロイドの部屋だよ」
「あ！ありがとうございます」
ガチャ、いつかのフロイドの癇癪で歪んだドアノブをひねれば、そこにはフロイドとジェイドがそれぞれベッドに腰掛けていて、…アズールがベッドサイドの椅子に腰掛けていた。
コチラを見つめるその銀色の目があまりにも絶望感で塗れていたから、咄嗟に口を開いたけど、何も言えないまま唇を噛んだ。なにを言えばいいのか、わからなかった。
「シレーヌ、…小エビと仲良さそうじゃん」
「あ、」
3匹の視線が集まる先、私と監督生さん(小エビ？)が握る手と手。
あ、完全に忘れてた。手をパと離して、ごめんね、と謝ると、監督生さんは勢いよく首を振った。
怖いくらいの静寂が部屋を包んでいる。監督生さんはヨシ！と赤い顔を手で軽く叩いて、パタパタとフロイドに駆け寄った。かわいい。
「先輩、これ、約束してたお菓子です」
震える手でお菓子を差し出した監督生さん。しかしフロイドは彼女を一瞥もせずに大股でコチラに歩いてきて、…私の首へゆるく手をかけた。
冷たい感覚。
ふざけてる？、フロイドの顔を見やるがしかし、その目に一切の感情はない。背中に冷や汗が伝った。
「ねえ、シレーヌ。なんで他の奴らと仲良くしようとすんの？俺たちが嫌になったの？また、いなくなる気なの？答えろよ」
「なにを」
「答えろ」
ギ、フロイドの爪が首に食い込んで、息が詰まった。
「ちが、そんな、つもりない」
「は？そんなつもりないのに、手繋いで仲良し〜ってナニ？」
この状態のフロイドは私には、どうにもできない。
一縷の望みをかけて、フロイド越しにジェイドとアズールへ視線を送る。…だめだ、ジェイドは微笑むだけだし、アズールなんて俯くばかりでなにを考えているのか。
やだ、死因:親友なんて…。
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作者名：ほこり | 作成日時：2020年12月23日 2時
