じゅういち ページ11
「なにここ!最悪!!」
「ああ、ヴィル」
ヒールの音を響かせながら歩いてきた、とんでもない美人。
制服からしてポムフィオーレ寮の人だろう。
美人は蜘蛛の巣を払ってから、やけに近い私と狩人をじっとり見て…、突然恥ずかしくなった私は狩人に背を向けて俯いた。
「アンタが噂の」
ふんわり私の目の前に立った美人は、私の顎を人差し指で優雅に上げて見せた。
つむじから、鼻、目、顎…ーー、彼は品定めをするように私を見つめて、微笑んだ。
「さすが人魚ね。顔も綺麗だし、肌も文句ナシ…、なにより、目が最高よ」
「そうだろう」
「ええ。ルーク、アンタが推す理由も分かるわ」
美人は私の後ろ、狩人へ目配せをすると、狩人は優しく私を立ち上がらせた。
ふらつきながら立ち上がった私、そしてそんな私の両の手を確と握りしめながら、美人はこう宣った。
「アンタ、ポムフィオーレに来ない?」
「…え!?」
突然の誘いに思考が固まる。
いや、でも、ポムフィオーレなんて私と一番遠いところにある寮だし。
は、と正気を戻して断ろうとすると、いつのまにか美人の後ろにいた狩人と目が合い、何故か閉口してしまった。
「いつでもいいわよ、答え。えーと」
「し、シレーヌです。シレーヌ・ルー」
「シレーヌ。アタシはヴィル・シェーンハイト」
「私はルーク・ハントさ」
ヴィルにルーク。
なんだか聞いたことあるような、ないような…。
よろしくね、と私の髪を一房攫ったヴィル。
なんだか気恥ずかしくて耳が熱くなって…、そんな私を笑ってからヴィルはしっとりと歩き出した。
それをみてルークは私に軽くビズをすると、鳥のようにふわりとヴィルの隣へ並び立ち、2人連れ立って去っていった。
それから、どうやって自分の部屋に戻ったのか覚えていない。
天女みたいなヴィルに、変に心を揺り動かしてくるルーク。
まるで夢の中にいるみたいだった。
「ぼんやりして、どうしました?シレーヌ」
ベッドに座って握られていた手を見つめていると、同室のアズールが顔を覗き込んできた。
寝巻きのアズール。もう寝るのだろうか、…あ、しまった、自分も早く寝なくてはいけないのに。
制服のままな自分にため息をついて、アズールに向き直った。
アズールに相談しよう、彼なら最適な答えを知っているはずだし。こんな熱に浮かされた状態じゃ正しい答えを出せるわけがない。
…そしてわたしはアズールに相談したことを人生一後悔することになった。
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作者名:ほこり | 作成日時:2020年12月23日 2時