２セット目 ページ6
孤爪 side
小走りで帰っていく彼女を見つめる孤爪。
不思議な感じの子だったな、という印象だった。
(あの子、名前なんて言うんだろ。…クロなら知ってるかな)
「おーい研磨さーん!!!そろそろ休憩終わりますよ!!!」
「…うるさいリエーフ」
「酷い!!!」
リエーフこと、灰羽リエーフに呼ばれた孤爪は体育館に戻る。
確かにみんなボールを持って始めようとしていた。
(サーブ練か…)
「お？おかえり研磨。告白はOKしたの？」
「…やめてクロ、そのノリやだ。告白じゃないし。」
「だよな、知ってるw
……あぁ、あの子面白い子だよな。名札返してもらった？」
知ってたのに聞いたのか、と少し黒尾を睨みながら
彼女について少し話した。
「…うん。…でも名前聞き忘れた。」
「ああ、あの子の名前ね、Aだよ。今井A。」
「今井さん……」
(…明日、話しかけてみようかな。)
「え?!なになに?!研磨さんってば告白されたの?!」
「…うるさいリエーフ。違うし。名札返してもらっただけ。」
「なんだとケンメァ!!!抜け駆けは許さねぇぞぉぉ!!!」
「…だから違うって虎。…ああ、騒がしいのが増えた。」
これでこそ音駒高校男子バレーボール部だと言わんばかりに
いつも通りの騒がしさがやってくる。
孤爪はその騒がしさが嫌いという訳では無いが、今はちょっと嫌だ。
「んまあ、名札をわざわざ離れた体育館にまで持ってきてくれるってことは
少しでも研磨と仲良くしてぇって思ってるんじゃないの？」
「…クロまでそんなこと言うの」
(…仲良くしたい、って思ってくれてるなら嬉しいことには違いないけど…。)
「まぁまぁいいじゃねえか…ww
そろそろ俺らも研磨離れしないといけないってことだろ!!」
「うぅ、俺らの研磨さんが……」
「研磨もこんなに立派になって……」
いつもは突っ込んでくれる夜久や犬岡も悪ノリし始めたので
孤爪はもうこの話に関わらないことにした。
(……もういいや、止めても聞かない気がする。)
「…でも、ちょっとは気になるかも。今井さん。」
「…?! お、おう。そっか。」
黒尾にしか聞こえない位の声量で呟いた孤爪。
それを聞いた黒尾はめちゃめちゃ驚いているが、そんなこと気にしない。
(…明日がちょっと楽しみかも、)
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作者名：百。 | 作成日時：2020年7月5日 18時
