第六話 ページ6
胡蝶の鴉から通達を受け、急いで蝶屋敷へと向かった。昨日と同じように部屋の隅でベットに入る小さな少女
手には粥が入っているであろう椀をもっていた。
「早かったですね、不死川さん」
胡蝶からガキの名前、歳…聞き出せたのはそれだけだと聞き、俺はAの元へ歩いた
「よォ……それ、食わねぇのかァ?」
椀の中は減った様子が見られない
口をつけていないのだろう
目が虚ろだ
鬼に襲われた人は皆こういう目をする
ましてやこいつはまだ8歳…それに、今まで生きてきた村も何もかも失ってしまった。
里親の件については、今言うべきではないだろう
「食わねぇと治るもんも治んねぇぞォ」
無視をしている訳では無い
ただ今はただただ絶望し、心が全てを拒否しているのだ。
生きているのに、死んでいるようだ
「飯は食っとけ、
胡蝶、俺はお館様の所に報告してくる」
「わかりました、お願いします」
正直、このガキにどう接すればいいのかわからない下手なことを言って、傷つけるのは避けたい
柄にもなく、俺はあの小さな少女を気遣っていた
.
「名は紫原A、まだ八つの幼い娘です」
お館様はまた悲しそうにそうかと呟く
「正直、俺にはこれからあの子供をどうしていけば分からなくなりました。ろくに言葉も交わせていません…」
「大丈夫、まだあれから2日だろう?
あの子もきっと自分の中で色々と整理しているんだ…今はただそばにいてやりなさい」
「はっ」
そばにいる
そんなことでいいのだろうか
あの日、泣きながら俺に抱きついてきたAを俺は思わず抱きしめた
無意識に弟たちと重ねてしまったのかもしれない
守れなかった温もりが、玄弥以外に1つでもこの腕に増えてくれたらと、どこかでそう思っていた
だから、今あの子供が息をして目を開けているのが、俺には酷く嬉しかった
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作者名:鳥屋 | 作成日時:2019年10月11日 19時