お前が最強だなんて認めない

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「元気でね…A」

待って！行かないで！

段々と遠くなる背中を前にして喉から出そうになる言葉を必死で押し殺した

「ゔあああああああ！」

一体どれ程の間そうしていたのだろう
　
気づいた時には声は枯れ果て床にぶつけた頭から流れた血は既に固まり始めていた

無気力に横たわったそんな私の視界にはいつもと変わらず輝く星が映りこむ

もう…いっその事このまま死んでしまえたら…

「随分派手にやられたな」

「…アンタは」

私が目を閉じようとした瞬間、突然聞き覚えのない声がし振り返るとそこには男が1人こちらを見つめ笑っていた

「孔時雨。一応お前とは昔あってるけど覚えてる訳ねぇよな」

孔…そう名乗った男はズケズケズケと私の前に歩いてくるなり顔についた血をスーツの袖で雑に拭いた

「ふっ。今のお前の顔、アイツが見たら笑い転げるだろうな」

「なんのつもりだ？此処が何処か分かってんのか」

「俺だって仕事以外でこんな所きたくねぇよ。だからさっさと受け取れ」

「っ！？何でアンタがこれを…」

これは…伏黒が五条とやった時に使用していた特級呪具 天逆鉾。

どうしてこの男がこれを？まさか！

「アイツからの伝言だ。情けねぇツラするくらいならコレで死ねとさ」

「伏黒は死んだ」

やはりこいつはあの時いたもう1人の男…

「んじゃ死人を冒涜すんのはやめろ」

先程までとは違い真剣な顔をした男は私の額に銃口を突きつけそう言った

「敵討でもするつもり？」

「まぁ、そんな所だな。A、お前コレからどうするつもりだ？」

「…さぁ。もう私が行く場所なんてどこにもない」

「だから逃げんのか？」

逃げる…か。ずっとそうだった

逃げて逃げて、その結果他人の大切なモノまで壊した

そして私はまた傑1人に責任を負わせて逃げようとしている

「全部嘘にする気か？それならなんでまだお前は生きてんだよ！」

揺らぐ

意思が…後悔が…何故だ

全部私のせいだって言うのにさっきから思い出すのは都合の良い思い出ばかり

“これで私達は友達だ“

初めて傑に会った時も

”また悟と喧嘩したんだって？“

傑と過ごした何気ない日常も

私は何一つ捨てる事はできない理由に

「嘘になんて出来るわけないだろ！」

死ぬ事さえ出来なかった。その理由に…

「失いたくなんかない！消したくなんかない！私は…まだ皆んなに笑っていてほしいんだよ！」

ああ、そうか

私は私の生きた意味を捨てる事なんてできないんだ

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