お前が最強だなんて認めない

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「…きろ。…までねてんだよ」

それは深い海の底にいる様な

ただただ心地よくて

今まで感じた事のないくらい

幸福に満ちた眠りだった

「ここが地獄？」

ゆっくり目を開けるとどこまでも続く様な蒼色の目が私を覗き込む

「俺がお前と同じ地獄に行くわけねぇだろーが！」

「…お前ハイになってんの？」

だがいつにも増してハイテンションなソイツに今は苛つく事はない。

五条程ではないが多分私も自らの体に起きた変化に興奮しているんだ

あー、そうか。なるほど…ね

あの時…私は…

「…五…条」

重い体を引きずりやっとの思いで彼の元へと辿り着いた私は何も出来ずただ泣いていた

殆ど感覚が無くなってしまった手を彼の頬へと当てればその氷の様な冷たさにもう彼は此処にはいないと思い知らされた

私が反転術式さえ使えれば五条は死なずにすんだ…

悔しさと自らの不甲斐なさで噛み締めた唇からは流れ出した物が口の中を鉄の味で染める

「…死ぬ…な」

頼むから返事してよ

お前はこんな所で死ぬ様な奴じゃない

お前が居たから私は生きて来れたんだ

お前が居無くなったら…私は…私は…！

その時だ

ほんの僅かだが、彼に触れていた掌から自分とは別の微量な呪力が自分の中に入ってくるのを感じた

「…何だこれは」

何故か鉛の様に重かったはずの体が少しだけ軽くなった様な…

「っまさか！」

硝子の能力は私達と同じ特別なもの

いくら五条と故今この状況で私に反転術式を使ったとは到底思えない

そうとなれば五条から流れ出た呪力が私に何らかの影響を及ぼしていると言うのか？

どちらにせよ…

「五条はまだ死んでいない！」

後悔の渦へと自ら飛びこび

何も見えなくなった暗闇で1人死を待っていたのは…諦めていたのは…私だけだったんだ

ねぇ五条

私はまたお前に救われてしまったみたいだ

だから今度は…今度こそは私が…

「生きろ五条」

私が死なないと言う確証もお前が治ると言う確証もない

それでも良い

ただ本当にこの世界に無限と言う可能性が溢れているなら縋りたくなったんだ

自らの唇と五条の唇を重ね今あるだけの呪力を五条に注ぎ込む

「…勝ち逃げなんて…許さないから…な」

段々と温もりを取り戻すその体に私は安心し遠のいていく意識に身を任せた

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