-蝶は水面月で羽を癒す-

＃９ ページ9

カナエ｢しのぶ、最近何だか楽しそうね〜｣

しのぶ｢そう？別に普通よ｣

家のリビングで姉と一緒に過ごしてる時に、不意にそんな事を言われた

カナエ｢そんな事言って、姉さんには分かるのよ？

もしかして…ついにしのぶにも、好きな男の子でも出来たのかしら？｣ﾆｺｯ

姉は楽しそうに私の顔を見ながら問い掛けてくる

しのぶ｢…馬鹿言わないで、私 今年 受験生よ？恋に現を抜かしてる場合じゃないわ…｣

カナエ｢あら、でもしのぶ 別に成績が悪い訳でも無いし…

授業も相変わらず真面目に受けてくれてるから、どの教科の先生からも評判良いままよ？姉さん、鼻が高いわ〜｣

姉は私の通うキメツ学園の生物学の教師をしている

校内でも私達が姉妹だという事は知れ渡っていて、よく私の事も姉の周りで話題にあがるらしい

カナエ｢それに、誰かを好きになるって…自分では思ってもみないタイミングだったりするものよ？

知らない内に、どうしようも無い程 頭から離れなくなってしまったり｣

しのぶ｢…｣ﾋﾟｸｯ

姉の言葉に手が止まった

悔しい事に、身に覚えがあってしまったからだ

カナエ｢しのぶは今まで、うちの病院を継ぐ為に勉強一筋で…そう言う話は一度も無かったから……

ごめんなさいね、私が教師になるなんて言い出して
しのぶには、自分が病院を継がなくちゃいけないっていうプレッシャーを掛けてしまったでしょ…｣

しのぶ｢何言ってるの姉さん、医師になる事や病院を継ぎたいって想いは私自身の物よ

例え姉さんが医師になっていたとしても、私は変わらず今の道を選んでいたわ

それに、姉さんだって夢や目標を掲げて教職に就いた事も分かっているもの…そんな風に言わないで｣

私達の家は代々病院を経営している
大きな病院で歴史もあり、親から子へと引き継がれ
いつか私達が継いで行く事になる

親の背中を見て育ったから、尊敬もしているしその仕事に興味を持つのも早かった

だからずっと幼い頃から医療者の道に進む事は決めていた

姉が教師を目指すと言った時も、驚きはしたけど
病院は自分が継げばいいからと反対はしなかった

でもやっぱり姉さんは気に病んでいたのね…

カナエ｢しのぶを勉強に縛り付けてるのは私のせいだと思っていたから、しのぶが勉強以外に楽しめる事が見つかれば私もとても嬉しいわ

特に…誰かに恋をする楽しさを知ってくれたら一番｣ｷﾞｭｯ

しのぶ｢姉さん…｣

姉はそう言いながら、切なそうな…でも暖かな笑みで私を抱きしめた

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