-蝶は水面月で羽を癒す-

＃４１ ページ41

蜜璃side

心配して声を掛けてくれた冨岡先生を引き剥がすように、しのぶちゃんが私の腕を引いてその場から離れる

しのぶ｢…｣ｽﾀｽﾀ…ｯ

蜜璃｢しのぶちゃん…っ…しのぶちゃん、待って…！｣

しのぶ｢…｣ﾋﾟﾀｯ

化学室の近くまで来た所で、やっとしのぶちゃんが足を止めてくれた

蜜璃｢ねぇ…良かったの？冨岡先生…｣

しのぶちゃんを呼ぶ声も、しのぶちゃんに向ける視線も
あんなに心配そうにしていたのに…

しのぶ｢問題無いわ｣

蜜璃｢でも、冨岡先生 凄く心配してたよ…？｣

しのぶ｢気の所為よ｣

蜜璃｢…っ｣


しのぶちゃんは、もう先生の事何とも思ってないって…確かに口ではそう言ったけど……

何とも思ってないのなら、誰にでも穏やかに接するしのぶちゃんが
今みたいな態度も、そんな苦しそうな顔もするはずない

どうして…？切ない思いをする程 好きなのよね…？

なのに、何で拒絶する様な態度をとるの…


しのぶちゃんは私と同い年でも ずっと大人っぽくて、綺麗で頭も良くて

だけど、時々少しだけ不器用な所が可愛くて…
それでも常に完璧で居ようと振る舞う努力を惜しまない

そんなしのぶちゃんが大好きだけど…

そのせいで恋を諦めたり、苦しそうな顔をする姿は見たくないわ

私に出来る事なんてないのかもしれないけど…


ｷｰﾝｺｰﾝｶｰﾝｺｰﾝ…

授業が進み、体育の時間になってグラウンドに出る

普通に会話はしてくれるけど、やっぱりしのぶちゃんはどこか元気が無くて…

蜜璃｢しのぶちゃん、授業が始まるまで 少しあっちの屋根のある所でお話しない？｣

しのぶ｢えぇ｣

花壇の縁に腰を下ろして二人肩を並べる

蜜璃｢…ねぇ、しのぶちゃん…何があったかは、私には分からないけれど

私、しのぶちゃんには幸せでいて欲しいって思うの｣

しのぶ｢…蜜璃ちゃん｣

蜜璃｢しのぶちゃんは頭が良くて大人だから、きっと色んな事を考えて行動してるんだと思う

だけど……今のしのぶちゃんは、とっても苦しそうだわ…

もし、自分が我慢すればいいなんて思ってるのなら駄目よ…そんなの誰も望んでないもの

我慢して欲しいって冨岡先生が言ったの…？そうじゃないでしょ…？｣

しのぶ｢……でも、私…は…｣ﾌｲｯ

私に向けられていた視線が逸らされ、また切ない顔…


ﾋﾟｰｯ！

蜜璃｢…！｣

しのぶちゃんの言葉の続きより先に、集合の笛の音が響いた

しのぶ｢授業始まっちゃうわ、行きま……-ﾌﾗｯ

蜜璃｢…！しのぶちゃ…！｣ﾊﾞｯ

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