-蝶は水面月で羽を癒す-

＃３７ ページ37

聞き間違いなんかじゃ…ないわよね……

でも、聞き返さずには居られなかった

しのぶ｢…今、なんて…｣

｢…胡蝶さん本人の耳に入ってるかどうかは知らないけど、結構 皆が噂してるんだ…

胡蝶さんと冨岡先生の仲が恋仲なんじゃないかって｣

しのぶ｢何それ…！勝手な事言わないで！｣ｶｯ

人の気も知らないで、一体誰がそんな噂を…っ

｢…っ…ごめん！そりゃそうだよね…胡蝶さんみたいな優等生に限ってそんな…

教師と生徒が付き合うなんて、非常識な事ある訳ないよね…っ｣

しのぶ｢あ……ごめんなさい、声を荒らげたりして…｣

私の反応に焦って慌てふためくその人を見てはっと我に返る

でも、もし本当にそんな噂が一部にでも流れてるんだとしたら…冨岡先生の耳に入る前に ちゃんと止めておかないと


しのぶ｢…もし次にその噂をしてる人が居たら ちゃんと言っておいてください

私は冨岡先生に……特別な感情は一切ありませんと…｣ｸﾞｯ

喉の奥に、つんとした痛みを感じながら口にした言葉

バレてはいけない本心を隠した、貼り付けた笑みを向けて…

しのぶ｢それに、冨岡先生には別に恋人がいらっしゃるようなので その方にも失礼ですし｣

｢わかった…っ…伝えておくよ｣

しのぶ｢ありがとうございます。助かります｣ﾆｺｯ

これでいい…そんな変な噂は早く消え去るべき

私が今口にした事は事実…

私と冨岡先生が特別な関係にない事も、それ所か冨岡先生には私以外の恋人が居る事も事実

そして……

冨岡先生に特別な感情は一切無いという事も
これから事実にして行くべき事だから


そうだわ、彼の言う通り私はずっと優等生を続けて来たじゃない

成績だって常に上位で、学校のルールを破った事も
世間一般の常識からはみ出る事だってしてこなかった

冨岡先生に恋し始めてからの私の方がおかしかったのよ…

正しい道に戻る良いチャンスじゃない

恋心の一つや二つ、ちゃんとコントロール出来なくてどうするの

こんな煮え切らない気持ち さっさと断ち切って、冨岡先生と顔を合わせるくらいなんて事ないと思える様になれるはずだわ


＿義勇｢俺は胡蝶が居ないと駄目だな｣

煩い…

＿義勇｢胡蝶｣


煩い……煩い…


私は別に…貴方の事なんか……っ



戻ってみせるわ、貴方と出逢う前の私に

貴方が誰と笑い合おうが、想い合おうが平気な私に…

しのぶ｢…なれる……はずだもの…っ｣



なってみせるから…

だから…どうか泣かないで、私の初恋……

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