-蝶は水面月で羽を癒す-

＃３１ ページ31

義勇side

カナエ｢冨岡くん、ちょっと良いかしら？｣ﾆｺｫｫｯ

義勇｢…！？｣ﾋﾞｸｯ

俺は知っている、その微笑みを幾度と見た事がある…
だがそれは目の前に居る胡蝶先生のものではない


＿しのぶ｢冨・岡・先・生…？｣ﾆｺｫｯ

義勇｢…っ｣

妹の方だ……っ

さすが姉妹、怒り方もそっくりだとは

でも、普段穏やかな振りをしている妹と違い
姉の胡蝶先生は根っからの穏やかな性格かと思っていたが勘違いだったのだろうか…

そうでなければ、同じ職場という以外まるで接点の無い胡蝶先生にここまで怒りを向けられる覚えは無いし

……ﾊｯ…もしや！

〜[義勇脳内妄想]〜

しのぶ｢姉さん聞いてよ！冨岡先生って、本当に手が掛かって困っちゃうのよ！？姉さんからも一度厳しく言って貰えないかしら｣

カナエ｢まぁ、そうなの〜！？私の可愛い妹を困らせる人は私がビシッと叩き治さないとね〜｣

〜〜〜

間違いない…そういう事だ、そうとしか考えられない

義勇｢…｣ｶﾞｸｶﾞｸｶﾞｸ…ｯ

思い返せば、あの時間を楽しんでいるのも
胡蝶と過ごせる時間を特別に思っていたのも俺だけ

胡蝶はいつも怒っていたし、心底ウンザリしていたのかもしれない


そして積もりに積もり姉に相談の末、その姉にこんな校舎裏の人気の無い所に呼び出され締め上げられる…

義勇｢…｣ｽﾝｯ

相手は女性…張り合おうと思えば負ける事は無いであろうが、胡蝶が其れを望むのなら甘んじてその罰を受けよう


…だが……

カナエ｢…ねぇ、冨岡く……ﾊｯ…｣

やっと口を開いた胡蝶先生は、振り向き俺の顔を見るなり何かを感じとったようにはっとして言葉を止めた

そんな事もお構い無しに、俺は堪らず問い掛けた

義勇｢…俺はもう…胡蝶に……貴方の妹に近寄らない方が良いのだろうか…｣

俺だけが心地良いと感じている事は仕方ない
今はそれで良いと思っていた…胡蝶と同じ時を共有できるのであれば何だって

でも、嫌な思いをさせたかった訳では無いから…

カナエ｢……冨岡くんは、しのぶの事をどう思っているのかしら｣

義勇｢…大切な人だと思っている……だが、きっと彼女には上手く伝えられていない…｣

カナエ｢…そう……ねぇ、冨岡くん…一昨日しのぶと会ったりしたかしら？｣

義勇｢…？いや、一昨日は出掛けはしたが、胡蝶とは顔を合わせては居ないが…｣

何故そんな事を……？

カナエ｢あら…じゃあ何であの子…-｢ちょっと、姉さん！｣

カナエ・義勇｢…！？｣ﾊﾟｯ!

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