-蝶は水面月で羽を癒す-

＃１９ ページ19

杏寿郎｢…しのぶは相変わらず落ち着いているな｣

しのぶ｢え？｣

汗を拭きながら杏寿郎さんと話していたら、突然そんな事を言われて何かと耳を傾ける

杏寿郎｢俯瞰的に物事を見る事が出来るというか…いつもどこか冷静で、無茶をせず一歩引いて冷静に考え行動する事が出来る

俺はこんな性格だから、自分がこう！と思った事に対して突っ走ってしまう所があるのでな

君の そんな何事に対しても冷静沈着に対処出来る所が羨ましかった……昔からな｣

しのぶ｢…｣

昔から＿＿

そう口にした杏寿郎さんは、本当にはるか昔の遠い記憶を巡っているかの様な口振りで…

言うなれば、まるで前世の話でもしているみたいに懐かしんで口にしているようだった

そんな訳ないのに……

杏寿郎｢だが…そんな君が、つい半月ほど前に冨岡と とても楽しそうに話をしていて驚いた｣

しのぶ｢…！｣

杏寿郎｢仲がいいのだな｣

しのぶ｢…そんなんじゃありません…｣ﾌｲｯ

杏寿郎｢む…そうなのか？｣

しのぶ｢……冨岡先生が何を考えているのか、私には分からなくて…｣

誰よりも傍に近付けたと思っていたのに、そうでも無くて…
頼ってくれてるって…心を許してくれてるんだって思った次の瞬間には距離を置かれた…

なのに、私の姿を見つけて声を掛けてきたり…

あの人が一体何を考えているのか…どうしたいのか…
私の事をどう思っているのか

何も分からない

杏寿郎｢はははは！冨岡は相変わらず口数が少ないからな…

君達は知り合ってまだ日も浅い、分からない事が多いのは無理もないだろう

だが 分からないのなら、本人の傍で少しずつ知っていけばいいのではないか？

何…焦る必要は無い…もしかしたら、明日死ぬかもしれないなどと気に病む世界でも無いのだ

今日が終わり夜が明け、朝が来ればまた一日が始まる今の時代で…
手を伸ばせば届く距離に居る今この瞬間を、大事に生きなさい｣

随分と壮大な例え話なのに、それは何故か現実味を帯びていてすんなりと胸の奥に落ちて行った

まだ私達は出会ったばかり…確かにそうだ……

冨岡先生には他に好きな人が居る
その事実は拭い去れないけれど、それを抜きにして私はどれだけ努力をしたんだろう

あんなに愛おしそうに好きな人の事を話す冨岡先生を見たら、どれだけ想いを寄せてるのかは嫌でもわかる


こんな考え、私らしくない事はわかってる

でも……



無駄になるかもしれなくても

もう少しだけ、傍に居させて欲しいと…願ってしまう

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• 金　運: ★☆☆☆☆
• 恋愛運: ★★★☆☆
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