Only Love Part 35

VIPルーム ページ33

『こればっかりはね。出会いだから』

俺は当然のことながら、Aの顔を思い出した。

今日も病院に行ったんだろうな。

ホテルに帰ったら、電話してみよ。

『ヒョンはわかりやすい。Aさんのこと考えてるでしょ』

『まあね。恋人だから。それに、今ちょっと気がかりなことがあって』

『何？』

『Aのお父さんが病気で入院してるんだ』

『え？！それは心配だね』

『手術はうまくいったんだって。だから心配することないって、Aが言ってた』

『そっか。なら良かった』

ユチョンは顔をくしゃっとさせて笑った。

『ヒョン、もっと飲む？俺、注文しようか？』

『いや、いい。明後日は台湾でライブがあるし、食べ過ぎ飲みすぎは禁物だから』

『そうだよね、ヒョン。さすが』

高級中華料理店のVIPルーム。

スタッフさんたちがそれぞれ好みの酒を飲み、ご馳走に舌鼓を打ち、談笑している。

毎度の光景だ。

今回は広報の仕事だから、仁川大会の関係者も来ている。

『やっぱり、中国には美人さんが多いね。あの人なんか、俺好みだな』

俺はユチョンの視線を追った。

黒髪のロングヘアの美女が、室長のそばで楽しそうに笑っている。

『Aには負ける』

『そう言うと思ったよ、ヒョン。Aさんは“最高”だもんね』

ユチョンは「最高」のところを日本語で「さいこー」と言った。

『そのうち最高の相手が見つかると思うよ』

『そうかなあ。俺、自信ない。大好きになるけど、どうでもよくなっちゃうのも早くて。ダメなんだよなあ』

ユチョンはそう言って、ため息をついた。

恵美さんと別れたあと、何人かとそういう関係になったらしいけれど、恋人ができたとは聞いていなかった。

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