Only Love Part 35

好感度アップ ページ30

「はい。しかしながら、ジェジュン様はお嬢様と出会いました。そのことがすでにあのお方の人生を変えたということではないでしょうか。ジェジュン様は祖国とお嬢様、どちらを選択されるでしょう」

思い切ったことを言いすぎただろうか。

Aさんは自分の両手に視線を落として、しばらく黙っていた。

その綺麗な横顔を、僕は飽きることなく見つめていた。

おそらく、僕が「定年」になるまでずっと、仕える人だ。

あと何十年あるのか。

Aさんのそばにいる男は、ジェジュン様ひとりであって欲しい。

きっとおふたりのお子様たちも、見目麗しい人たちだろう…

思わず妄想の世界にのみ込まれそうになって、僕は慌てて自分を引き戻した。

「ありがとう、如月。恵美と雄介にも言われたの。結婚できないなんておかしいって。やっぱり、そうなのかな…」

「ジェジュン様はお嬢様と結婚したいとおっしゃっているのですよね？」

「ええ、そうなの」

「だったら、何も問題はございません」

「はあ…」

Aさんはため息をついて、片手を胸の上に置いた。

こんな何気ない仕草が可愛らしいと思う。

色々な面がある人、様々なギャップを垣間見える人というのは、とても魅力がある。

ずっとAさんのそばで働くと決めた僕の選択は間違っていない。

あらためて僕はそう確信した。

「ありがとう、如月。やっぱり最高の御意見番だわ」

「光栄でございます」

「これから父のお見舞いに行って、それからお風呂に入って休むことにするわ」

「かしこまりました」

同じ家の中なのに、「お見舞いに行く」というAさんの言い方が興味深い。

Aさんと旦那様の関係がよそよそしい、というわけではなく、昔の武家の父と娘のような、と言ったらいいのか…

うまく言えないのだけれど、なんだか格調が高い気がして、僕はますますAさんに好感を抱いてしまった。

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