Only Love Part 35

夫婦愛 ページ23

「Aらしいな。如月君に特別休暇とはね」

今朝退院してきた父は、寝室の大きなベッドで上半身を枕にもたせかけていた。

麗子さんが編んだ暖かそうなニットのカーディガンを肩に羽織っている。

「秋穂さん、明日は執事がいなくてごめんなさいね。如月君はAちゃん専属の侍従みたいな存在で。如月君が淹れてくれるコーヒーと紅茶、ほんとに美味しいのよ」

麗子さんは片時も父のそばを離れない。

甲斐甲斐しく父の身の回りの面倒をみていた。

もっとも、料理を作るのも運ぶのも弘子さんだったけれど。

「大丈夫だよ。人間、働きづめはよくない。ちゃんと休みを取って、リラックスしないとね」

「そうですわね。秋穂さんの今回のことも、神様が休めって命じたのかもしれない」

「うん、そうだったのかもしれないな」

夫婦は見つめ合い、頷き合っていた。

すごい夫婦愛。

病院ではあまり感じなかった。

やはり自分の家というのは格別なんだろう。

「秋穂さん、もうそろそろ寝ないといけないんじゃありません？食後のお薬も飲んだし、もう休まないと…」

「まだいいよ。昼寝してしまったから、まだ眠くない」

「でも…」

階下のダイニングで、ひとりで晩ご飯を食べたあと、父の様子を見に来たのだけれど、どう考えても私はお邪魔虫だ。

「私、そろそろ自分の部屋に引き上げるね。明日、またお見舞いに来るから」

「あら、Aちゃん、明日お仕事は？」

「お昼は幸田先生のところに行く予定よ。明日は久しぶりに自分で運転して行くわ」

「矢上さんに運転してもらわなくていいの？」

「いいのいいの。自分で運転したいから、大丈夫」

たまには車を動かさないと、運転感覚が鈍ってしまう…

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