Only Love Part 35

熱弁 ページ9

「ジャズミュージシャンというのは、大変興味深い存在でございますね」

帰りの車の中で、如月はそんなことを言った。

「如月もジャズを聴いたりするの？」

「それはもう。ご存知のとおり、私はロックが好きですが、ジャズも聴きます。その場に合わせて聴き分けると言いますか。就寝前にチルドレン・オブ・ボドムを聴くことはございません」

「そりゃそうでしょうね」

「ジャズはやはり大人の音楽という感じがいたします。クラッシックもロックもポップスも、基本は譜面通りに演奏され、その場でインプロヴィゼーション、つまり即興演奏をするということはほとんどありません。まあ、フェイク程度ならありますが」

如月が自分の趣味趣向について熱弁を語るのは珍しい。

「一方、ジャズは即興演奏こそ命。同じ曲を演奏しても、同じ演奏は2度とありません。その場で瞬時に作曲して演奏する。これほどスリリングなことはないでしょう。私は特にジャズピアノが好きでございます」

おそらく如月はジヒョンさんを気に入ったのだろう。

もっとも、恋愛対象からは外れているのは確かだ。

「お嬢様の送別会では裏方におりましたので、次回はぜひとも客席でジヒョンさんの演奏をじっくりと拝聴、鑑賞したいものです」

「そうだったわね。あの時は、ほんとに助かった。また一緒に新宿のMに行きましょう」

「光栄でございます」

如月は運転しながら頭を下げた。

「ところで如月は今回の撮影のことはどう思ってるの？」

「お嬢様が写真のモデルになられるのは、私としてはとても嬉しいことでございます。お嬢様はお美しいですから」

とっさに返事ができなかった。

「撮影するのは好きでもされるのは苦手と伺ったことがございます。苦手を克服しようとなさるそのお気持ちにも感銘いたしました」

「やだな、如月。もちあげすぎ」

「恐縮です。ただひとつ心配なことがあるとしたら、やはりジェジュン様のヤキモチでございましょう。いくら承諾なさったとはいえ、お嬢様とジヒョン氏のツーショット写真をご覧になったら、面白くないと思われるかと…」

「たしかに…」

お休みコール→←長居

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す