ブイロクBUSAIKU!? (ページ29)

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忘れもの purple ページ29

目が覚めると、起きなきゃいけない時間を30分も過ぎていた。
一瞬目を疑って、目覚ましとスマホの時計を交互に見るけど、間違ってはなさそうだ。
フリーズが解けて、焦りが押し寄せてきた。

『やばい。』

ベッドから飛び起きて準備を始める。
えーっと、資料は持って、定期も…ある。
髪はとりあえず纏めてバナナクリップで大丈夫。
ひとりぶつぶつ言いながら、頭をフル回転させて準備をする。
慌ただしい音が響いて、博くんを起こしてしまったみたい。
目を擦ってまだ眠そうな博くんがリビングに入ってきた。

「A、おはよ。
　もしかして、寝坊しちゃった？」

火事場の馬鹿力ってやつなのか、間に合う目処はついていた。

『博くん、おはよ。
　がっつり寝坊したけど、間に合いそう。』

それを聞いて、博くんは安心したみたい。

「そう、よかった。」

にっこり笑った博くんの笑顔に癒やされる。

『博くん、じゃあ行ってくるね。』

まだ癒やされていたかったけど、そろそろ家を出ないといけない。
リビングから出ようとすると、

「A、忘れもの。」

って言う博くんの手には私のスマホ。
うわ、助かった。

『博くん、ありがとう。』

博くんに近づいてスマホを受け取ろうとするけど、伸ばした手は博くんにつかまれた。
そのままぐいっと博くんのほうに引かれる。

ちゅっ

いきなりのことに唖然とする私の手にスマホを握らせて、

「A、行ってらっしゃい。」

っていつもと変わらない笑顔で見送ってくれるけど、博くんそんなキャラだった？
混乱しながらも、私の顔はきっとにやけてる。