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「俺な、卒業したら東京行こうって思ってんねん。」
「…え、」
「ほら、俺カメラ好きやん？だからそーゆう系って東京の方が多いんかなーって！」
冬になって、寒さに手が悴むほどの気温になった。
学校帰り、康二と肉まんを買って公園で他愛もない話をしていた。
東京に行く。康二の事だから、冗談かな。なんて希望を持ったけど、そう言う目は
真っ直ぐで真剣、かと思うと私の方を向いて「どう思う？」ってにこにこしながら
聞いてくるから。
「…いいんやない？康二がやりたい事なら応援するよ？」
「Aならそう言うと思ったわぁ！この間いろーんな写真集とか雑誌見てたんやけどなぁ、」
子犬みたいにはしゃぐ康二の姿に、苦しくなった。
いつのまにか肉まんは冷えていて、立ち昇っていた煙も消えていた。
「好き」って、今伝えられたら、どれだけ楽になるんだろう。
康二が、いなくなる前に伝えたい。
初恋を、無かったことにしたくなかった。
「…っ、こう、じ、」
「んー？え、どーしたん、A？」
「…す、きっ、」
「…ぇ、？」
「ずっと、好きだったよ、ばーかっ、」
目を見開いて固まる康二。
開こうとする口を手で押さえ、首を横に振る。
返事なら、わかりきっていた。それをわざわざ、康二の口から聞くなんて
きっと、耐えられない。
眉を下げて、何か言いたげにしている康二。
私は、ばっ、と振り返り、その場から離れた。
それから冬休みに入るまでの数週間。
私と康二は一度も口をきかずに過ごした。
遥や他の友人に、何かあった？と心配されたけれど、何もない、とはぐらかした。
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作者名：もも | 作成日時：2024年3月14日 13時
