Fischer's・ウノ (ページ38)

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36話ページ38

何も言わない、動かない、ただそこに立っているだけ。

なのにどうしてこんなにも悲しさが溢れていることが分かるんだろう。

表情は真顔で目線はバッチリ目は合ってる。

理由なんてわかってる。

手だ。

嫌われるのが怖いと言った瞬間から、魁は自分の手のひらを固く握り締め始めた。

顔は真顔のままだし、目線もずっと合ってる。

ただ手だけ異変がある。

約束なんて結局はただの言葉だもん。

引かないよ、嫌わないよなんて言ったところで、本当にそうなるかは分からない。

きっと、魁は優しいから口に出さないだけで、心の中では軽蔑してるんだろう。

こんなにも長い付き合いなのにまだ信用を置かないのか、と。

めんどくさい女だって思われたかな。

魁たちがそんなことを思う人達じゃないなんてことはずっと前から知ってる。

でもやっぱりどうしても怖いと思ってしまうんだ。

ごめんね、めんどくさくって。

そう一言謝ろうとした時、魁が口を開く。

モ「どうしたら、不安じゃなくなる？」

ウ「え、？」

モ「俺は、信用されたいし信頼されたい。Aは大事な友達だし、なによりも大切な存在だから、溜め込んで欲しくない。」

優しい口調で語りかけるように喋る魁の顔はいつものようにふんわりとした雰囲気だった。

優しすぎて、暖かくて、嬉しくて、病院の布団に涙がこぼれた。