33話 ページ35
モトキside
ウ「絶対いや!言わないから!」
さっきから頑なに意見を変えようとしないAにシルクもだんだん折れかけ始めている。
どうしてそこまで公表することを嫌がるのかが俺には分からなくて、違和感を覚える。
さすがに、貧血のせいか眠そうにしているAを前にしつこく口論をする気は無いらしく、「とりあえず明日また来るわ。それまで頼む。」と言い残してシルクもマサイもザカオも帰って行った。
でも俺は見逃さなかった。
シルクたちが帰るとわかった瞬間、まるで安堵したかのようにそっと息を吐いて肩の力を抜いたこと。
そして、なにかに怯えるみたいに震えている指先を隠したことも。
俺は今更帰っても到底眠れるとは思えないし、ここにいた方が幾分気分が楽なので病室に残る。
Aは俺だけが残ると聞いた時ほっとした顔をした。
何もしてやれなかったのにそんな顔をしてくれるのか。
シルクたちが病室のドアを閉め、足音が聞こえなくなった頃、Aが口を開いた。
ウ「…帰っちゃったね。」
モ「うん。寂しい?」
ウ「ううん。魁がいるから大丈夫。魁は残るんでしょ?」
モ「今戻っても心配でまともに寝れないしね。」
それに多分、玄関はAの血液で汚れていてあまり衛生的とは言えないだろうし。
それを言うと申し訳なさそうな顔をするのは目に見えて分かっているので黙っとくけど。
違和感があるようで、ずっとお腹の傷をさすっているAは、いつも通りに見えなくもない。
でも、誰よりも一緒にいて、誰よりも長く時間を過ごした俺なら分かる。
Aは無理してる。
なにか隠してる。
動画にしたがらないのも多分それが関係してる。
何にそんなに不安を抱いてるのか、教えてくれないと俺は超能力者じゃないから分かってあげられない。
でも大丈夫。
どうすれば打ち明けてくれるのかは分かってるから。
モ「……ねぇA、もうシルクもマサイも居ないよ?」
そう促すと、換気のために少し開けた窓から夜風が吹いてAの髪の毛が少し揺れたと同時に、Aの限界は突破された。
ウ「……っ、こわ、かったぁ……」
ポロポロと涙を流し始めるAに安堵する。
やっぱり無理やり恐怖を溜め込んでたのかな。
たまにこうして吐き出させないと体調不良にすぐ繋がるAは、何故かシルクたちの前では変に隠したがる。
理由は教えてくれないから知らないけど、多分変なこと大きく考えてるんだと思う。
そろそろそれも辞めさせないといけないかもしれない。
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作者名:ますもも | 作成日時:2023年3月12日 23時