29話 ページ30
モトキside
「心拍数低下してます!」
「出血が酷い…輸血最大にして!」
「オペ室の準備できました!」
「もっかいバイタルチェックして!」
とても順調とは言えない声が広がるので、冷や汗が止まらない。
顔が青ざめてると何度も指摘されるし、指先が酷く震える。
あの後すぐに救急車が来て、Aを搬送して行った。
もちろん俺や諒たちも夜中だとか関係なしに直ぐにみんな集まった。
意識は変わらず戻らないし、さっきから出血も止まってないらしい。
このままだと失血死してしまう可能性が高いと聞いた。
凶器が果物ナイフという比較的小型のものだったのが不幸中の幸いだったらしく、もし包丁やそれ以上の大きさを持つ何かで刺されていたら、即死だったそうだ。
Aを刺した男は、救急車と同時に到着した警察に取り押さえられた。
考えがまとまらない頭で聞いたのは、薬を摂取していて興奮状態になっていたということと、何度も何度も「ウノは俺のもの、ウノは俺が好き。」と繰り返し呟いているそうだ。
メンバーのみんなも、これだけの条件が揃えばウノ…いや、Aの熱烈なファンだったということくらい察しがつく。
シルクはリーダーとしての責任を感じているみたいで、顔がさっきからずっと暗くて固い。
ンダホは怒りが溢れすぎて逆に真顔だし、マサイは貧乏ゆすりが止まらない。
ダーマは椅子に座って一点を見つめて何も言わず、動かないまま。
ザカオは怒りと言うよりは心配が勝っているようで、オペ室の前を何度も往復しては深呼吸を繰り返す。
みんないつも通りとはかけ離れている。
それが普通だし、むしろいつも通りにするのは気持ち悪い。
Aがオペ室に運ばれてから約2時間後、使用中のランプが消えた。
みんな直ぐに下を向いていた顔を上げ、椅子に座っていた人は立ち上がり、歩き回っていた人は止まった。
ゆっくりと鉄の扉が開く。
きっと、きっと、大丈夫。
あれだけ無茶しても倒れないAだもん。
きっと、今回だって、大丈夫。
__そうだろ?A。
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作者名:ますもも | 作成日時:2023年3月12日 23時