28話 ページ29
モトキside
バスタオルでざっくり適当に体を拭いたあと、急いでスウェットとズボンに着替えた。
髪の毛からポタポタと水滴が落ちてくるのが少し鬱陶しいけど、インターホンが鳴ったなら気にしていられない。
出前とか何も頼んでないし、この時間に誰か来るなんてちょっと違和感がある。
考えすぎを信じてお風呂場を後にすると、目の前は地獄が広がっていた。
ウ「え…………い”った……」
?「はは、ははは、はははははははは!」
お腹を押えながら床に倒れてるAと、果物ナイフを左手に持って奇妙に笑っている黒い服の男。
何が何だか分からなくて、混乱して、でもやばい状況っていうことだけは理解出来て。
何をどうしたらいいのかが全く分からない。
けど、目の前にいる男を野放しにしては行けないと本能が告げた。
昔、習っていた空手がまさかこんなところで役に立つとは思わなかった。
動画で役立てたかったし、こんなことに使いたくなかった。
相手の足をひっかけて体制を崩し、その隙に押し倒して持っていたタオルで足を縛る。
腕は男の服の袖の部分を後ろで結んだ。
興奮状態なのか、ずっとひとりで笑っている男は気味が悪いけど、逃げる様子が見られなかったからとりあえず放置する。
Aが心配で、後ろを振り返った。
フローリングに赤色が広がっていく。
内臓を刺されたのか、色が普通よりも黒い。
救急車を呼ぶために携帯を探すが、自分の携帯はお風呂に入るならいらないだろうとリビングに置いてきたことを思い出す。
取りに戻ろうとしたら、Aが羽織っているカーディガンのポケットから「ハク」と表示されながらバイブが震える携帯が出てきた。
ちょうどいいと思って通話ボタンを押し、震える声で話す。
モ「は、はく?Aが…さ、刺された。きゅ、救急車と警察、呼んで欲しい。犯人は、おれ、の目の前にいる。一応、拘束してるし、凶器も没収したけど…意識はあるから急いで欲しい。」
マサイの家にスタッフ全員とシルク、マサイ、ンダホがいたようで、焦っている声が小さく聞こえる。
俺も、Aがいなくなるかもしれないと思うと指先どころか身体中が震える。
急いで風呂場からタオルを持ってきて、傷口を抑える。
何度呼びかけても返事がないので、恐らくもう意識は無い。
ただ呼吸はしているので、気絶しているだけと分かる。
だからってまだ安心はできない。
少し遠くからパトカーと救急車の音が聞こえてくる。
たのむ、はやくきてくれ。
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作者名:ますもも | 作成日時:2023年3月12日 23時