お兄ちゃんと妹【白布賢二郎】 (ページ8)

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お兄ちゃんともう1人の兄ページ8

　
　
　
　
玄関の鍵を開け

靴を脱ぎ廊下を歩いてリビングへ

いつもと変わらない行動なのに

どこか胸騒ぎがしていた

「ただいま」

「お！おかえり！ちょっと久しぶりだな〜、A。」

「に、兄さん……」

やっぱり…と心の中で毒づく

ニコニコとした笑顔を向けてくるのは

1つ上のバレー好きな兄ではなく

白布家の長子であり

私のもう1人のお兄ちゃん

年は私よりも6つ上

既に20歳を超えているため

仙台の方で仕事をしていて

普段はこの家にはいない

だからこうしてこの家のリビングにいるのは

少し違和感があった

「休みが取れたから久しぶりに可愛い妹の顔見ようかなと思って」

「そっか。お仕事大変なの？」

「んー、まぁ忙しいけどやりがいはあるよ。ずっとやりたかった仕事だし」

兄は獣医として働いているらしい

けどよく知らない

年が少し離れているせいだろうか

あまり“こっち”の兄とは関わってこなかった

だから受験の時も就活の時も

大変そうにしていたんだろうけど

あまり記憶に彼の姿はいない

「Aもそろそろ受験だろ？頑張れよ〜」

「……うん。ありがと」

何故かあまり彼の顔が見たくなくて

私の顔が見られたくなくて

逃げるように自分の部屋に戻った

傷付いたような視線を向けられていることなんて

気が付くわけがなかった
　
　
　
　
　
　