お兄ちゃんとありがとう ページ35
ザァザァと力強く振り続ける雨のせいで
元々落ち着いている賢二郎の髪は
冷たい雨のせいでもっとぺったりしていて
私よりも綺麗な髪なのがすごく腹立たしい
同じシャンプーなのになんでだろう
バサッと勢いよく開いた白い傘は私一人では大きくて
頑張れば春樹と夏樹も入れそうだ
半歩先を歩く賢二郎は
機嫌がいいのか悪いのかよく分からない
けど、元々低い気温に雨が追加され
いつもよりかなり冷え込むのに
迎えに来た時に濡れたのか
学校から帰るときに濡れたのかは分からないけど
肩と髪が濡れているのは
わざわざ迎えに来てくれたのに申し訳なく感じて
肩にかけていたカバンの中からタオルを取りだした
「賢二郎、はい」
「……なに」
「濡れてるじゃん。風邪引かれても困るし」
「いいよ別に。どうせすぐだし」
「1回も使ってない綺麗なタオルだから」
「別にそう言うことじゃなくて」
頑なに受け取ってくれないから
無理やり賢二郎の傘に入り込んで
首にかけてやると、嫌そうな顔をしたけど
突き返すのがめんどくさいのか
そのまま髪を拭いていた
見慣れた通学路のはずなのに
兄とは一緒に通ったことが1度も無い道
だからだろうか?
いつもよりも景色は新鮮に見えた
相変わらず雨は強くて
1粒が大きいから足元はびしょ濡れだ
地面に叩きつけられる雨の音に交えて
ポソリと小さく呟いた
けれど、耳がいいのか
思ったよりも声を小さくできてなかったのか
兄には聞こえていたみたいで
つい照れ隠しでキツい言い方をするのは
私の悪い癖だった
「…ありがと。迎えに来てくれて」
「………熱でもあんの?お前がお礼言うとか怖いんだけど」
「言わなきゃ良かった」
雨の音に交じって
聞こえてきた声は私の願望による幻聴だろうか
それとも…__
「どういたしまして」
久しぶりの兄の優しさが見えたのだろうか
後者であればいいのにと
さりげなく車道側を歩く兄を盗み見ながら
小さく願った
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ぬぬ - ウインナーのくだりで察してしまい吹きました、、 (12月19日 16時) (レス) @page17 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ますもも | 作成日時:2023年10月22日 3時