お兄ちゃんと落書き ページ26
教室で友達と雨宿りをしてから
30分ほど経過した
友達の会話に相槌を打ち
たまにこちらから話題をふり
面白い時には楽しく笑っていれば
思っていたよりもすぐに時間は過ぎていった
けれど、雨は止むことを知らないし
それどころか心做しか強くなっている気もする
周りの子達はそろそろ親に連絡しようかと悩んでいる
うちの場合
お父さんは忙しいだろうし
お母さんもわざわざ私のためだけに迎えには来ない
兄さんはきっと出かけているし
弟たちは迎えに来るという選択肢をそもそも持たない
結局は雨が緩まるのを待つしかないのだ
雨のせいで気温は低いし
電気がついていない外や廊下は
9月というのもあってかなり暗い
窓には結露が付着していて
去年も同じクラスだった友達が窓に落書きしている
丸っこいニコちゃんマークを描いているのを見て
私も家の窓に描いて怒られたなぁと思い出す
昔は大好きだったはずの雨も
今では大嫌いになってしまった
__”おにいちゃんみて!にこちゃんマーク!”
__”まどさわるとゆびつめたくなっちゃうよ?”
__”おにいちゃんいるからへいき!”
__”ふふっ、なんだよそれ”
まだ春樹達が生まれてなくて
まだ兄さんも小学生だったから実家にいて
まだ賢二郎と仲良しだった頃
家の窓は、雨が降ると特別なキャンバスに変わった
魚を沢山描いて水族館だね、と笑った記憶もある
跡が残ってバレたら怒られるからと
賢二郎がタオルで窓を掃除してくれて
その後は冷たくなった私の指先を温める
賢二郎の白くて、綺麗で、暖かい手が大好きで
温めるきっかけをくれる雨が大好きだった
そう思わなくなったのは
一体いつからだろうか
「…ん?誰かいる」
描く場所がなくなって面白くなさそうな友達が
不思議そうに窓の外を見て呟いた
雨というのは視界も悪くする
濃霧のせいもあって
3階にあるこの教室から下のグラウンドなんて
見えるわけが無いのに
確かに誰かがいた、と言い切る友達が
妙に笑顔なのが怖かった
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ぬぬ - ウインナーのくだりで察してしまい吹きました、、 (12月19日 16時) (レス) @page17 id: 74e0460151 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ますもも | 作成日時:2023年10月22日 3時