お兄ちゃんと妹【白布賢二郎】 (ページ24)

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お兄ちゃんと登校ページ24

　
　
　
　
珍しいお母さんからの説教も終わった

時計を見ると7:20

いつもなら既に家を出てる時間だった

歯磨きを済ませた弟たちはノロノロとしていて

まるで遅刻しそうな危機感がない

「ハルたち、そろそろ出ないと遅れるよ？みんな待ってるんじゃないの？」

「…うん。行ってきます」

豆粒のように小さい声だけど

絞り出した春樹の声は

思わずおやつを買ってあげたくなるほどに

しょんぼりしてて

賢二郎の説教はやはりやり過ぎなのだと再確認する

春樹はランドセルを背負ってとぼとぼと玄関に向かった

けれど

「…夏樹？行かないの？遅れるよ？」

「……おれ今日はねーちゃんと一緒にいたい」

「そりゃ可愛いワガママだね。どうしたの」

泣き虫で甘えん坊な夏樹だから

怒られた後にしょげるのはいつもの事だった

けどここまで言い切るのは初めてで少し驚いている

態度に出していないけど賢二郎も驚いている

箸が止まってるから

「…おれ今日はもう学校やだ」

「えー、でもお姉ちゃんは学校休めないもん」

「やだ」

「そう言われてもなぁ」

ランドセルを目の前に持ってきてあげても

ふんっとそっぽを向いてしまう

初めてすぎて対応の仕方が分からない

「…どうしたら学校行ける？」

「行かない」

「どうしても？」

「いやなんだもん」

「そっか〜」

嫌なものを強制はさせたくないのだけど

お母さんも兄たちも

学校を理由もなく休むのには反対派の人間だ

ちらっと盗み見たお母さんの顔は

休むのは無しよと言いたげな顔だった

さすがに私にそれを説得させる力は無い

「…ハルはもう行ったよ？」

「いかない」

「うーん」

なにかご褒美でもあげればいいのか

もので釣るのは良くないかもしれないけど

学校に行ってもらうにはそれしかない

本当は嫌だけど

すごくすごく嫌だけど

出来るなら言いたくなかったけど

学校に行ってもらうためには仕方ない

「…もし、今日一日学校でいい子に出来てたら」

「……」

「帰ってきたら一緒に、」

＿＿＿バレーボールしよっか

その数分後

双子の元気な「行ってきます」が

リビングに響いた
　
　
　
　
　