お兄ちゃんと妹【白布賢二郎】 (ページ18)

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お兄ちゃんとカマかけページ18

　
　
　
　
リビングには空気清浄機の働く音と

午後からは非常に雨が強くなる模様です

お出かけの際には傘を持参して下さい

天気予報を告げる可愛いキャスターさんの声

「おいハル！それ俺の！」

「ナツだって昨日俺の卵食っただろ！」

「でもトマトあげたじゃん！」

「もーうるさい。ハム欲しいなら俺のやるから」

「けんじろにーちゃん機嫌いいの！？」

「おいこらやらねぇぞ」

双子の食べ物喧嘩とアイツの声

いつもよりは少しだけ騒がしい朝だったのに

「あ、そういえばA、いちごタルトどうだった？美味かったか？」

「「げっ」」

「お前あの時間にタルト食ったの」

「食べてはない」

「それ以上丸くなると老後に響くぞ」

「その目玉トマトにしてやろうか」

「え、食ってないの？でも冷蔵庫になかったよ？」

やはり悪いことはバレる

この男は最悪のカミングアウトをした

おかげでふたりの顔は真っ青だ

｢俺食ってないけど」

「いや、俺でもねぇよ！？あげた本人が食わねぇよ！」

「別に疑ってない」

急に黙る双子は怪しさ満載で

多分兄さんたちは犯人が誰かはすぐにわかった

名乗り出るまでは泳がせる気なのだろう

「…春樹はタルト知らねぇの？」

「し、らない」

「夏樹、お前は？」

「俺も知らないっ」

「ふーん」

「まぁお前らなわけないか！……ところで、あのタルトのクッキー硬かった？」

「いや！柔らかかったよ！」

「いちごもプルプルだった！」

「……あーあ。お姉ちゃん知らないよ」

「「あっ」」

「お前らそれ食ったらそこ座れ」

許してけんじろにーちゃん！

と半泣きで縋っているけど

隠れてつまみ食いした罪は

この家では何故かかなり重罪扱いだ

しかもそれが他人のものだったとなると余計に

特に私は家族の中でも怒るとめんどくさい方で

勝手に自分のおやつを食べられて

癇癪を起こしたことは少なくない

その被害にお父さんを含める男子軍はよく遭ってきた

だから怒るのだ

こいつらをしっかり反省させる変わりに

怒るなよって意思表示のために

今回はもう既に私は許してるから

別に説教しなくてもいいんだけど

珍しく私のために怒ってくれている

兄たちが見たいというのは

わがままだろうか
　
　
　
　