お兄ちゃんと妹 4 【白布賢二郎】

妹と代替品 ページ37

　
　
　
　
　
　
｢あっ、シラブくん…だっけ？｣




｢…どうも。｣




｢あーー君に謝んないといけないことあるんだよね…｣






アップ途中の水分補給中に声をかけてきたのは




今日の対戦相手の主将で牛島さんがやたら気にかける男




及川徹




うちのクラスと女子がイケメンだなんだと騒いでいた




同じポジションのせいかあまりこの人は好きじゃない




謝りたいと言われて心当たりの無さに驚きつつ




ボトルをカゴに戻して及川サンの方に向き直る






｢なんでしょう｣




｢あのね、君の妹ちゃんに軽い冗談言ったら、すんごい怒っちゃって…機嫌損ねちゃった｣




｢…それだけですか？｣




｢えっ、うん。いや俺Aちゃんが怒るところなんて見たことないからさ、やらかした！って思ったんだけど｣




｢家じゃ不機嫌なことの方が多いんで大丈夫です｣




｢あ、そうなの？まぁでも一応、ごめんねっ！｣




｢はぁ｣






どこかの部品を壊したとかテーピング貸りたとか




そういう話かと思えばまさかの妹の話とは




不機嫌なAなんて慣れているから




わざわざ謝ってもらうほどのことじゃないのに




意外と律儀なのか？この人って






｢ちなみに、なんて言ったんですか？ちょっとの悪口じゃ怒らないと思うんですけど｣




｢いや、Aちゃんの悪口というか…キミの、ね、…｣




｢え、俺？｣




｢俺の代替品で大変そう〜みたいなこと言ったら、【人の家族バカにするな】ってキレられちゃった……｣




｢……まぁ、代替品は腹立ちますけど｣




｢ごめんて！｣




｢牛島さんがあなたを必要としてるのは事実ですし｣






これは間違いなく俺の本音のはずだ




俺の実力じゃどう頑張っても及川サンには敵わない




けど心のどこかでやっぱり期待していた






＿＿”Aのおにーちゃんバレーすごい上手なの！”

＿＿”お兄ちゃんはね、すごいセッターなんだよ！”

＿＿”尊敬するプレイヤー？…け、賢二郎。絶対秘密ね！？”






ずっと前から1番近くで俺のプレーを見てきて




その度にすごいすごいと声を上げる妹だけは




俺が1番のセッターだと言ってくれるんじゃないかって




及川サンの代替品という言葉は間違ってない




でもそれを否定した人がいることと




その否定した人がAだということが妙に嬉しかった











｢今日はボコボコにします｣

｢え、いきなり！？負けないけど！！｣
　
　
　
　
　

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