お兄ちゃんと妹 4 【白布賢二郎】

お兄ちゃんとセミさん ページ22

　
　
　
　
｢今年も始まっちゃったね〜若利クン｣




｢そうだな｣




｢いっつも疲れるよね〜｣




｢？疲れない。ただ少し眠りやすくなるだけだ｣




｢ウンウン、疲れるよね〜｣




｢疲れない｣






｢五色、合宿は初めてだよな？｣




｢は、はいっ！ちょっと緊張してます…｣




｢いつもの練習と変わんねぇから大丈夫だ｣




｢ス、スパルタ…ですか？｣




｢そりゃ当然だろ｣




｢で、ですよね｣











｢……ほんと切実に帰りたい｣




｢監督に相談すれば｣




｢殺されろと？｣






大きなカバンを肩から流してやたらと重たいドアを開ける




目の前に広がるのはそれぞれ荷物を持っている部員たち




寮生活の人達はいつも通りの部活用具だけみたいだけど




私や賢二郎みたいな実家からの人達は大荷物だ






｢お、白布たちも来たな｣




｢………ね、誰だっけ｣




｢3年ピンサーの瀬見さん｣




｢おう、学年違うと分かんねぇよな。瀬見です｣




｢ご、ごめんなさい、名前と顔が未だに一致しなくて｣




｢人多いからしょうがねぇよ｣






にっこり笑ってくれる瀬見さんは




私の横にいる兄とは大違いに爽やかで優しそうな人




前に天童さんがセッターだって言ってた気がする




横で眠そうに首を回している賢二郎を盗み見ていると




視線に気付いた賢二郎が｢なんだよ｣と睨む






｢……瀬見さん、賢二郎とスタメン変わった方がいいと思います絶対に｣




｢え、あ、どうも…？｣




｢バカ言うな寝ぼけてんのか｣






いつしか烏野で勉強とマネージャーをやった時




影山とは別に3年生のセッターがいたけど




その人と雰囲気そっくりだ




なんかこう…んー、






｢The・爽やかで優しい先輩…みたいな。賢二郎とは真逆｣




｢ま、まぁ、確かに愛想はねぇけど…バレー上手いし｣




｢上手いだけでスタメン入れるなら尚更賢二郎じゃなくていいです。｣






本音を言っただけなんだけど




瀬見さんは凄く気分が良くなったのか




私の頭をわしゃわしゃと撫でて




｢兄とは違って可愛げあるな！｣と褒めてくれた




可愛い時期ならこいつにもあったはずなんだけど




小さい頃の賢二郎を思い出していると




賢二郎はそそくさと私を置いて部屋に荷物を置きに行った




おい、置いてくな私ここの道分からん
　
　
　
　
　

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