悪役に選ばれし華麗なる華 (ページ7)

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6話ページ7

貴方side

『キミ、お名前は？』

「な、なんでお前に教えなきゃいけないんだゾ」

『名前は？』

「っ、だから！お前には…」

『………』

「ヒッ」

先程までの威勢がまるで消え
耳と尻尾を垂らせて怖気づいてしまった狸くん

別に怖がらせようとした訳じゃないんだけど

＿＿あれ誰だ？

＿＿新入生？

＿＿2年生じゃないのか？

＿＿3年生かもよ

＿＿つか声高くね？

＿＿女みたいに細いな

注目を浴びていた狸くんに声をかけたせいか
私も注目され始めた

声が高いとか女みたいだとか
あまり耳にしたくない言葉が聞こえる

学園長はまだ説明をしてくれていないのか

2、3年生に説明する時も骨が折れたのだから
新入生には早めに説明してと頼んでおいたのに

＿＿な、なぁ、あの人オンナじゃね？

＿＿はぁ？ここ男子校だぞ

＿＿願望強すぎて幻でも見てんじゃねぇのか？

＿＿いやでも、確かにおかしい

＿＿ウソ、じゃマジで女の子！？

野次馬たちの相手をする暇もないので
スルーしながら狸くんを怖がらせないように
しゃがみこんで同じ目線にする

こちらを睨んで警戒する姿はまるで猫のようで
狸と呼ぶのは失礼だったかもしれない

『お名前、言えるよね？』

「グ、グリム…」

『グリムくんか。君は、この学園に入学したいの？』

「！！したいんだゾ！」

『そっか』

目線を合わせるためにしゃがんでいたのを辞めて
ゆっくりと立ち上がる

頭を軽く撫でてあげれば目を細めて善がった

まるで本当に猫みたい

グリムくんのことは
とりあえず置いておいて次は……

『貴方は？』

「へ？」

『キミ、名前は？』

「ぼ、ボクは……」

彼はきっとこの学園以外に行く宛てもないだろう

共に学ぶ学友となるであろう
彼の目を見て私は微笑む

彼の名は＿＿＿

「ゆ、ゆう……です…」

得体の知れない「ただの人間」に
向けられている視線は怖いものばかり

学園長の視線ですらいいものでは無い

そんな中私だけがにこやかに笑って呟いた

『そっか。よろしくね、ゆうくん。』

＿＿物語が今、幕を開ける
　
　
　
　
　
　
　