悪役に選ばれし華麗なる華 (ページ3)

今日:4 hit、昨日:2 hit、合計:2,061 hit

2話ページ3

貴方side

その後、図書館を出て真っ直ぐに
鏡の間へと向かいはしなかった

植物園、中庭、教室、音楽室、体育館…

いつも散歩は昼か夕方にするので、
真っ暗の景色は新鮮だった

学園全てを見て回っていれば、
入学式には出席するように口酸っぱく言っていた
学園長であるあの男の小言が増えるだろう

少し憂鬱になりながらも、
重たい足を鏡の間へと向けようとした

「……ん、魔力？…一体どこから？」

散歩に夢中ですっかり忘れていたが、
今は入学式の最中なのだ

入学式に参加している生徒は
全員鏡の間に集合しているため、
攻撃的な魔力を感じることなどありえない

一瞬だけ感じた僅かな気配を辿ると、
青い炎に包まれた鏡の間がザワザワと賑わっていた

『………！… これは……けほっ』

流石に燃え盛る炎の中を
ズカズカと入りたくは無いので、
入口で様子を見ようと扉を少しだけ開けた

しかし、熱で膨張していた空気が
いきなり扉を開けたことにより一気に解放され
中に溜まりこんでいた煙が襲いかかる

想像していたよりも火は大きいようだ

高温の炎によって発生した陽炎で
中の状況が確認できない

周りの生徒に声をかけようとしても

パニックに陥っているのか
状況説明ができそうな人もいない

暑すぎる環境は寒すぎる環境よりも苦手だ

早いところこの火の原因を突き止めたかった

「あっちちち！！」

『わっ、』

とりあえず中心へ進むべきだと思った矢先、
何故かお尻を燃やした男の子がぶつかってきた

お尻の炎が少しだけ
私の服にも移ってしまい裾が焦げた

まぁ頻繁に着るわけじゃないし構わないけど

肝心な男の子は熱さに気を取られ
ぶつかった事に気が付いていない様だ

私は胸のポケットから
黄色の宝石が埋められたマジカルペンを取り出した

『ウォーターショット！』

「あっちち！！…って、あれ？火が消えてる！？」

『大丈夫ですか？』

「ん？あ、お前が消してくれたのか！悪いな！
ありがとう！助かったよ〜！」

『ごめんなさい。
消すためとはいえ服を濡らしちゃって…』

そんなの構わないとどこかで聞いたことのある声で
言われたが記憶の棚を漁るものの思い出せない

どこかで聞いたことあるはずなんだけどな…

「はぁ…こんなに焦がしちゃったら、
きっとジャミルにまた怒られちまうなぁ」

…あ、多分スカラビア寮の人だ
　
　
　
　