悪役に選ばれし華麗なる華 (ページ12)

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11話ページ12

貴方side

オンボロ小屋にグリムくんを置いてきたあと
私は鏡の間へと戻った

学園長とゆうくんを連れていくためだ

しかし鏡の間には2人の姿はなく
闇の鏡は調べ物をしに図書館へ向かったと教えてくれた

図書館か…ちょっと遠いな

少し面倒だが1から探すよりはマシだ

私は闇の鏡に礼をしてから鏡の間を立ち去った

階段を登り廊下を歩き角をふたつ曲がってまた歩く

暇な時に授業を抜け出して歩いているので
この道にはかなり慣れている

見覚えのある扉が見えてきて
歩くスピードを弛め扉を開けた

すると＿＿

「保護者に連絡のつかない無一文の若者を放り出すのは
教育者として非常に胸が痛みます」

「は、はぁ…」

どうやら2人はまだ中で調べ物をしているようだ

図書室の扉を開けて1番に耳に飛び込んだ会話を
受け流しながら中へと入る

『なら、あのオンボロ小屋を使うのはどうでしょう？
寝泊まりはできますよ。私がしてるので。』

「あぁ、あの誰も使っていないボロボロの…って、
スカーレットくん！？」

『好きですね、その反応』

「それは貴方がいつもいきなり現れるからです！
そんな事より、先程の狸くんは？
きちんと対処してくれましたか？」

『はい。ちゃんと“連れて”いきましたよ』

「そうですか。
ところで、貴方一体いつあの小屋で寝泊まりを？」

『いつって、ほぼ毎日ですよ。
学園長が用意した私の部屋は先生たちに
囲まれてて過ごしにくいんですもん。』

「また貴方はそうやって勝手なことを！
あんなに完璧なお部屋のどこに不満があるんですか！」

『先生達の！部屋が！ち・か・い！』

「あ、あの…！オンボロ小屋って、？」

戸惑いがちに放たれた言葉に軽い口論はピタリと止まる

もしここにローズハートくんがいれば
図書館では静かにおし！！と怒っていただろう

「簡単に説明すると、元々は寮として
使われていた建物です。」

『今は使われていないから少し汚れてるけど、
全然寝泊まり程度ならできるよ。私がしてるし。』

「“無許可”の寝泊まりですけどね」

『ねちっこい男は嫌われますよ』

「どこでそんな反抗的な言葉を覚えてくるんですか！」

『どこぞのライオンからです』

くだらない口論は埒が明かないので一方的に切り上げ
ゆうくんの手を引いて図書館を出る

早くしないとグリムくんが寝てしまうかもしれない

もしくは“彼ら”が…

私たちは少し急ぎ足で小屋へ向かった

学園長の慌てた声は無視した
　
　
　
　
　