悪役に選ばれし華麗なる華 (ページ2)

今日:4 hit、昨日:12 hit、合計:2,073 hit

1話ページ2

貴方side

「まったく、勝手に扉を開けて
出てきてしまった新入生など前代未聞です！」

式典服とセットのブーツを鳴らしながら、
散歩コースである図書室を彷徨いている

すると本来聞こえないはずの声に
思わず眉を顰めた

1人でゆっくりと夜の散歩を
楽しみたかったのだけど

「どれだけせっかちさんなんですか。」

「いや、えっと…僕は新入生じゃ…」

「さぁさぁとっくに入学式は始まっていますよ。
鏡の間へ行きましょう。」

「いやだから、僕は…」

どうやらあの男は、
戸惑っている彼の話を聞くつもりはないようだ

そして掴んでる灰色の生き物…狸？猫？は
使い魔か何かだろうか

気になって声をかけようとしたが、
気が付くと彼らは出口へ向かっていってしまった

「はぁ…なんなんだ、この夢」

新入生と言われていた男の子がボソリと呟く

夢…か

確かに、彼はこの世界の人では無いようだ

いつもの悪い癖で初対面の人間を無意識に探り
相手の技量を測ってしまう

そのおかげか、
自分とは合わない人とは関係を持たなくて済むのだ

しかし彼はそういう次元じゃないようだ

彼には魔力を一切感じない

人は少なからず魔力を持って生まれてくるものだけど、
彼にはそれすらも感じない

全くの無だ

ここまで魔力を感じない人は出会ったことがない

恐らく彼は……

いや、私には関係の無いことだ

深く考えるのはよそう

しかし…彼の魂はこの世界のものじゃ無さそうだけど
寮は決まるのだろうか

というかそもそも、魔力がないただの人間を
“アノ”学園長がここに置いておくだろうか

けどもし、彼がここの生徒になったなら……

『…ふふ』

鼻歌がこぼれるほどにご機嫌に
なっていることにも気が付かず

散歩は再開された

私は新たな玩具を見つけた子供のような気持ちのまま
次はどこに散歩へ行くか考えるのに夢中になっていた

「…？あの人、誰だろ。」

男の子がこちらを見ていることに、
気が付かないほどに
　
　
　
　
　