お兄ちゃんと妹 3 【白布賢二郎】

妹と盗み見 ページ47

賢二郎side




｢ここの公式は1年生の頃にやった分の応用で…｣




｢なぁおい、Aちゃんが着た後の体操服ってどんなかな？やっぱいい匂いすんのかな！？｣




｢……｣




｢俺的にはお前から香ってくるシトラスの柔軟剤に加えて…多分甘い桃みたいな可愛い匂いがすると思うんだよねぇ〜！｣




｢……はぁ｣




｢汗とかも絶対臭くないだろ？つかそもそも汗かくのかな？かかなそうじゃない？｣




｢……黙るのとシャーペンが手に食い込むの、どっちがいいか選べ｣




｢…黙ります｣




｢ふん｣






隣から声をかけてくるのは妹に興味津々の笹部




兄としてはこんなのが妹に近づくのは




普通に腹立つし不愉快だから




こいつに妹の話題をしたことなんてないのに




どこから仕入れてくるのか知らないが




あいつがお昼を誰とどこでどんな風に食べていたとか




今日はいつもより眠そうだったとか




先生に褒められて喜んでいる姿が可愛かっただとか




その他にも色んなことをわざわざ俺に報告してくる




別に興味無いしそんなの言わなくていいと




何度も言っているのに聞く耳を持たない




前で黒板に公式を書いている先生は




耳が遠いのかこいつのお喋りには気が付かない




注意されることがないと永遠に喋るこいつは




正直いってかなりめんどくさかった




話の内容を右から左に受け流していると




窓の外から甲高い笛の音が聞こえてきて




視線を向けるとそこには




暑苦しくてめんどくさいと評判の体育教師が




アップのランニングを終えた1年の女子たちに




なにかの話をしているところだった




大方テストのことだろうが




笹部のつまらない話を聞き流しながら




俺の視線はグラウンドに縫い付けられていた






｢なぁおい聞いてる？さっきから何見て…あ！Aちゃんじゃん！バレーの見本かな？｣




｢(……あいつお手本なんて出来んのかよ)｣






あまりにも黙り込む俺に不信感を抱いた笹部が




授業中ということも忘れて窓に顔を近づけた




こいつも視力だけはいいのか




教師の前に立っている女子がAだとすぐ気付いた




どうせ適当にこなすのだろうとおもって




視線を黒板に戻そうとしたら笹部が言った






｢はー、さすがお前の妹だな。素人の俺でもわかるわ。Aちゃん相当上手いだろ？｣




｢は、｣






慌てて戻した視線の先には




まるで試合中に上げるみたいな綺麗なトスを繰り返す




Aの姿があった
　
　
　
　

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